現在取り組んでいる主な研究を紹介します  → 研究業績リストは こちら



累積的熱影響を受けるCr-V鋼の相変態とナノ炭化物析出

Cr-V鋼の相変態と析出について共同研究中

工事中


選択酸化により作製したAg-SnO2接点材のCu系基板へのレーザ接合

Ag-SnO2系接点材のレーザ接合に取り組んでいます

工事中



電気部品の小型・多様化に対応して,微小部の加熱溶融に適したレーザ加工技術の応用が進んでいる.マイクロスイッチなど電気接点では,接点材である酸化物分散Ag合金(ODS-Ag)をCuまたはCu合金基板に接合する必要がある.ODS-Agの酸化物は直径0.5μm程度のSnO2粒子であり,予め内部酸化によりAgマトリックス中にほぼ均一に形成されている.本研究では,ODS-Agの組織制御と基板へのレーザ接合を目指し,Ag+Sn混合物からのSnO2形成機構,ならびにレーザ加熱溶融による酸化物の形態変化を調査した.また基板種類により接合性に差が見られたため,各接合界面のミクロ組織解析を行い,電気抵抗への影響を考察した.


Cu/Cu-Ni/Cu複合抵抗材のレーザ造形と電気特性

3D造形した電気抵抗材の抵抗特性を明らかに!

2024/7/17 三菱電機様に委託し,Cu-Ni系電気抵抗材の3D造形を行いました.今回もφ1.2mmのコンスタンタンワイヤを用いて,縦◯横◯の矩形体を銅板上に造形.造形体の電気抵抗は造形方向によって変わるのか,その原因は?



Cu合金は添加元素によって機械的特性や電気特性が変化します.一般に電気抵抗は純銅よりも増加しますが,代わりに特殊な機能を持つCu合金やAg合金などを純銅と組み合わせて,シャント抵抗や接点材(スイッチ)が造られます.この時の接合はろう付けや溶接になり,専用の装置が必要になります.レーザや電子ビームなどを用い,純銅を基板として必要な機能部分を直接造形することができれば,もっと自由に抵抗部品や接点部品を設計でき,汎用加工機で少量多品種生産が可能になるでしょう.
今回,厚さ4mmのCu板の間にΦ1.2mmのコンスタンタン線CN49を供給しながら,高抵抗部を造形しました.ワイヤ方式では,Cu/Cu-Ni界面でのNi拡散を約130μm程度に抑えることができました.この結果,測定された抵抗値は合成抵抗則にほぼ一致し,抵抗温度係数(25~50℃)もほぼゼロでした.しかしやや大きめの抵抗となっており,さらに電気抵抗の異方性などを調べています.


その他の研究内容


均一なAl/Cu共晶接合組織の電気的特性

Al/Cuの溶融接合では,金属間化合物-Al2Cu(θ)とαAlが共晶組織αAl/θを形成します.これは層状で異方性が大きい組織であり,θの電気抵抗が高いため,接合部の電気的特性に影響すると考えられます.
我々は純Al板と純Cu板からαAl/θのみからなる試料を合成し,その組織変化と電気抵抗率の関係を明らかにしました.この結果,もし実際の接合で接合部をほぼ均一にαAl/θとできればその抵抗率は0.025μΩmで,Alのそれとあまり変わらない状態にできることが分かりました.

銅(Cu)やアルミニウム(Al)は電気を良く伝え,電池を構成する電極材料として欠かせません.この二つの金属を溶接すると多くの金属間化合物(IMC)が現れます.固体のCu側から溶融したAlの内部にまでびっしりとIMCが生成しますが,写真のβやγ1のように膜状になると接合強さが低下したり,電気抵抗への悪影響が考えられます.
もっと自在にIMCを操れないものか.IMCの種類をシンプルにできないか.電気的に理想的なIMCの形態が分かれば,新しいAl/Cu接合につながるかも...こんな探索的研究にも取り組んでいます.

Cu-酸化物混合融体のダイナミクス


鋭意 研究中

累積的熱影響によるCr-V鋼の特異な炭化物析出

焼入れ性の優れた鉄鋼材料を積層造形すると凝固直後のマルテンサイト組織となり,上の層が積層されるたび累積的に熱影響を受けて硬さが低下します.この累積加熱を実験的に再現して見ると,硬さが不連続に変化しました.これは計算された準安定平衡状態図からある程度説明できます.

累積加熱を実験的に再現して,工具鋼の硬さ変化とミクロ組織の関係を詳しく研究しています.成分によってナノ析出物を生じ,優れた軟化抵抗を発揮することが分かってきました.
→ 熱処理国際会議でポスタ発表しました

工具鋼SKD61とCuとの接合造形 ~冷却能と硬さ~

工具鋼SKD61は熱間金型に用いられる高級鋼です.製品の冷却を早めるためにCuと複合化した金型材料が望まれます.鋼とCuの接合は一般には難しいのですが,レーザによってSKD61粉末をCuブロックに積層し,一定の形状に造形できることが分かりました.SKD61/Cu複合板の冷却性を実験で評価しています. →三五ものづくり基金成果報告書に掲載されています

SKD61は通常,焼入焼戻しにより硬さを調整して使用されます.ところが積層造形では凝固直後のマルテンサイト組織となり,上の層が積層されるたびに熱影響を受けて硬さが変化します.焼戻しに相当する熱処理を加え,ある程度硬さを均一にできる改良鋼があり,その組織変化を明らかにしました.
天田財団 FORMTECH REVIEWに掲載されています