現在取り組んでいる主な研究を紹介します  → 研究業績リストは こちら



レーザ造形した複合抵抗材の電気特性

Cu合金は添加元素によって機械的特性や電気特性が変化します.一般に電気抵抗は純銅よりも増加しますが,代わりに特殊な機能を持つCu合金やAg合金などを純銅と組み合わせて,シャント抵抗や接点材(スイッチ)が造られます.この時の接合はろう付けや溶接になり,専用の装置が必要になります.レーザや電子ビームなどを用い,純銅を基板として必要な機能部分を直接造形することができれば,もっと自由に抵抗部品や接点部品を設計でき,汎用加工機で少量多品種生産が可能になるでしょう.
日本金属学会第174回講演大会ー積層造形/新規プロセス に関するセッションでM1辻が発表しました
(金属学会のプログラムページが開きます)
図は銅板を突き合わせ,その隙間にコンスタンタン(Cu-Ni合金)のワイヤを供給しながら,高抵抗部を造形した最近の結果です.現在,これが設計通りの抵抗値をもつのか,Niの拡散状態と関連付けて調べています.

累積的な熱影響による特異な炭化物析出

焼入れ性の優れた鉄鋼材料を積層造形すると凝固直後のマルテンサイト組織となり,上の層が積層されるたび累積的に熱影響を受けて硬さが低下します.この累積加熱を実験的に再現して見ると,硬さが不連続に変化しました.これは計算された準安定平衡状態図からある程度説明できます.

累積加熱を実験的に再現して,工具鋼の硬さ変化とミクロ組織の関係を詳しく研究しています.成分によってナノ析出物を生じ,優れた軟化抵抗を発揮することが分かってきました.
→ 熱処理国際会議でポスタ発表しました

工具鋼SKD61とCuとの接合造形 ~冷却能と硬さ~

工具鋼SKD61は熱間金型に用いられる高級鋼です.製品の冷却を早めるためにCuと複合化した金型材料が望まれます.鋼とCuの接合は一般には難しいのですが,レーザによってSKD61粉末をCuブロックに積層し,一定の形状に造形できることが分かりました.SKD61/Cu複合板の冷却性を実験で評価しています. →三五ものづくり基金成果報告書に掲載されています

SKD61は通常,焼入焼戻しにより硬さを調整して使用されます.ところが積層造形では凝固直後のマルテンサイト組織となり,上の層が積層されるたびに熱影響を受けて硬さが変化します.焼戻しに相当する熱処理を加え,ある程度硬さを均一にできる改良鋼があり,その組織変化を明らかにしました.
天田財団 FORMTECH REVIEWに掲載されています

軽金属接合組織の最適化

銅(Cu)やアルミニウム(Al)は電気を良く伝え,電池を構成する電極材料として欠かせません.この二つの金属を溶接すると多くの金属間化合物(IMC)が現れます.固体のCu側から溶融したAlの内部にまでびっしりとIMCが生成しますが,写真のβやγ1のように膜状になると接合強さが低下したり,電気抵抗への悪影響が考えられます.
もっと自在にIMCを操れないものか.IMCの種類をシンプルにできないか.電気的に理想的なIMCの形態が分かれば,新しいAl/Cu接合につながるかも...こんな探索的研究にも取り組んでいます.