金属材料は熱処理によってその特性が大きく変化します.特に鉄鋼材料は,同じ成分でも3倍ほど高い強度を,加熱・急冷のみで比較的容易に得ることができます.またレーザ等による材料の局部加熱は,必要な部分のみを硬化・改質したり,異種材を接合することができます.田中研では,鉄鋼や銅・銅合金およびその酸化物を対象に,熱処理や改質後のミクロな構造と特性との関係を明らかにしようと日夜取り組んでいます.ミクロ構造とは多様な原子が配列した結晶が集まったグループ(相)の組合せを指し,ミクロ組織とも言います.ミクロ組織は熱や加工のエネルギーを受けて生き物のように変化します.これをうまく制御すれば,機械材料は優れた力学特性や電磁気特性を持つようになるのです.
いかに省エネルギーで意図したミクロ組織に変化させるか
将来のモノづくりを目指した材料研究を志する学生を待っています
写真の計13名は3/19に学位授与式を迎えます.
電解腐食・電解抽出という鉄鋼材料中のごく微細な構造をレリーフ状に浮き出させて観察する手法に取り組んでいます.良く表面研磨した試料に特殊な溶液中で定電流を流すと,鉄の素地が少しずつ溶けだし,埋まっていた異質な相が写真のように粒子と素地の位置関係が鮮明に観察できるようになります.
この手法は古くから鉄鋼材料の析出物や介在物を抽出するのに用いられてきました.4年生のひとりはアドバイスを受けながら電解条件を最適化し,10nmにも満たないナノ炭化物がマルテンサイトブロックに沿って析出する様子をとらえました.
...研究の詳細はこちらをご覧下さい.
ピカピカと光る銅(Cu)の粉末.これは金属積層造形用の球状Cu粉末で,金属3Dプリンタによって複雑な形状を造形できます.粉末は加熱されるとまず表面がうっすらと溶融し,となりの粉末と結合して液滴になります.その小さな金属液滴が集まって溶融池を形成し,移動しながら凝固していくんですが,ここで空洞ができると欠陥になります. 4年生二人はこのようなCu粉末の溶融挙動を研究しており,興味深い結果が出つつあります. ...使用している装置はこちらを参照して下さい. ...最新のデータはこちらを参照して下さい.
2021年度に導入されたレーザ加工装置ですが,金属溶融を研究対象とするからには正確に所定の温度に加熱する必要があります.レーザ加熱の要はビームの形状と出力・時間の制御にあります.4年生ががんばって,ビームのフォーカス距離と加熱領域の大きさを丹念に調べ,放射温度計で数多く測定した結果,出力×時間により到達温度をうまく制御できることが分かりました. 上の図で見てもらいたいのは,だいたい0.1sで1000℃に達していることです.これはごく少量の銅粉末の加熱結果ですが,10,000K/sという超高速で加熱され,1.0sでほぼ冷却されていることになります.
銅粉末と酸化物との混合物をレーザで溶融させ,銅とスラグが分離した2液相分離状態を作ります.これを他の材料の隙間へキャピラリティ効果によって浸入させ,材料の電磁気特性を遮断するような層を作ることに挑戦しています. 本学のIRレーザでは低速で溶融させなければならず,その間に基材も同時に溶融してしまうので苦戦しています.2kWくらいのレーザをお貸し頂ける企業様を募集しています.具体的な研究内容はこちらで紹介しています.
2024年度は9名の4年生,3名の院生が無事,3/21に学位授与式を終えました.
いつもながら揃いが良くなく3人ほど写ってないですが,とにかくおめでとう!
これまで3つの小部屋に分かれていた実験室が,大きな実験室に集約されました.移転にあたっては各装置の結線を外し,主要部分をクッション材でつつみ,再び結線と配管に悩むという皆さんの苦闘を経て,無事すべての機器が再稼働しました.D棟1階の奥ですが,西側窓に面して明るいです.徳納先生の実験室にあった装置の一部もやってきました.そのため,他の研究室の学生も頻繁に出入りし,楽しくかつ他の人がどんな実験をしているかなど交流しやすい開放的な実験室になりました.