材料の複合化や合金化による機能向上を目指し,高温からの凝固や相変態で生じる複雑なミクロ組織と特性との関係を研究しています.



・レーザなどによって一部を加熱すると,異種材を接合したり表面を改質することができます.その部分のミクロな構造と特性との関係を明らかにしようと日夜取り組んでいます.ミクロ構造とは多様な原子が配列した結晶が集まったグループ(相)の組合せを指し,ミクロ組織とも言います ミクロ組織は熱や加工のエネルギーを受けて生き物のように変化します.これをうまく制御すれば,機械材料は優れた力学特性や電磁気特性を持つようになるのです.

・簡単に言うと,熱を多く投入するほど原子が良く拡散して均一な相を形成し,これに大きな加工を加えるほどミクロ組織は微細になります.従来はこのようにして優れた強度を持つ合金材料や機械部品を製造していました.しかし近年の環境問題に対応して,特に自動車分野では部品が小型・集積化され,その生産技術にも多くの革新が起こっています.加熱するのも,短時間で必要な部分だけに(局所加熱),大きな設備を使わずに,そして汎用材料をベースに「適材適所」で改質する,あるいは高機能材を付加・接合していく.

いかに省エネルギーの加工プロセスでミクロ組織を意図したものに変化させるか
田中研では将来のモノづくりを目指した合金材料の基礎研究を続けています

古い記事になりますが,田中が2021年の「まてりあ」に投稿した記事を紹介します

研究を始めたころは自信なさげな卒研生も,最後には自信を持って発表することができます.「この研究はどこへ向かっているのか」を理解すれば,話し方が変わってきます.記事タイトルは "研究発表における「ねらい」と述語".

記事原文はここをクリック.

発表を控えた学生さんは一度読んで下さい.きっと役に立つはずです.そのうち発表するたびにアドレナリンが出るようになるかも!?


最近のニュース


日本鉄鋼協会第188回講演大会学生ポスターセッションで奨励賞を受賞!

日本鉄鋼協会は年2回,日本金属学会とジョイントで講演大会を開催しています.鉄鋼各社のハイレベルな研究発表とともに,多くの学生に発表機会を提供するため,学生ポスターセッションが行われます.今回も鉄鋼の各分野で合計80件ほどのポスターがありました.大学院生の発表登竜門になっているようです.今回はM1福冨が以下のタイトルで報告しました.

Cr-V鋼の累積加熱におけるγ+α域加熱が炭化物析出に及ぼす影響

厳しい残暑の中,大阪大学豊中キャンパスの大学会館サイエンス・コモンズで行われ,審査員の先生方とのディスカッション30分のあと,次々とやってくる学会参加者に2時間半にわたって説明するという立ち詰めでがんばりました.特に最後の方で,東北大学金属材料研究所の古原先生がお見えになり,一生懸命説明しました.古原先生,宮本先生には1ヶ月以上前にとりまとめた研究データについてオンラインで議論して頂き,ほんの1週間前に4年生が実験でお世話になったばかりです.
夕刻に参加学生無料のビアパーティーがあり,ナノ析出物の構造解析を指導して頂いた名工大・森谷先生(写真左)と談笑していると,表彰式が始まり,奨励賞として早々に名前が呼ばれました.


夏のオープンキャンパスで模擬実験を行い,高校生10名が参加しました

金属を変形させると硬くなった経験ありませんか?
機械材料は変形させて部材・部品に加工しますが,この硬くなる現象は原子のならびが乱れることから発生しています.スチロール球を使った「乱れ」のモデルで学習し,実験では実際に金属線を加工して硬くなること(加工硬化)を体験し,さらに加熱して「乱れ」をとれば再び曲げやすくなることを学びました.


2023年度のニュース

今年も卒研履修の8名の学生が旅立ちました!


2人ほど足りませんが...おめでとう.


レーザ加熱装置が入りました!

光産業創成大学院大学より,500W半導体レーザ加熱装置を譲渡して頂きました.立ち上げも終わり,現在は板状試験片において加工条件と加熱温度の関係を調査しています.これにより加熱条件のデータベースが蓄積されます.本装置のビームの形は0.3x1.2mmの楕円状で,XY方向に一定速度で走査できます.今後はほとんどの接合や溶着実験が学内でできることになり,うれしい限りです.加熱部の温度を測る放射温度計※1や接触式温度センサ※2を取り付ける予定です.
  ※2:基板温度をはかる熱電対システムを導入しました.
  ※1:レーザ光(λ=800nm)に干渉しない放射温度計を導入しました.

実験室が広く,新しく,機能的になりました!


これまで3つの小部屋に分かれていた実験室が,大きな実験室に集約されました.移転にあたっては各装置の結線を外し,主要部分をクッション材でつつみ,再び結線と配管に悩むという皆さんの苦闘を経て,無事すべての機器が再稼働しました.D棟1階の奥ですが,西側窓に面して明るいです.徳納先生の実験室にあった装置の一部もやってきました.そのため,他の研究室の学生も頻繁に出入りし,楽しくかつ他の人がどんな実験をしているかなど交流しやすい開放的な実験室になりました.


OBインタビュー 2022年度 田中研究室修了生 児玉勇毅さん
就職先はどのように決めましたか?

材料の研究に関わる仕事をしたいと思っていたところ,大同特殊鋼から来られた植益さんにいろいろお聞きし,また修士研究で今の会社を先生と訪れて難しい分析を依頼したことがきっかけとなりました.

今どんな仕事をされていますか?

大同特殊鋼や他の企業から材料の評価・分析の依頼を受け,それを報告書にまとめて返すまでの当社の業務を管理しています.いろんな専門技術が分かって楽しいです.

大学院の2年間で就職に役立ったことは?

課題解決の力がついたことでしょうか.仕事でヤバい・苦しい状況になっても何とか乗り切れそうな気がします(interview on 2023.6.9).

※この日は研究室で懇親会を行い,OBとして児玉さんが来てくれたので,卒業を控えた4年生から質問が相次ぎました.とても楽しい夜でした.


2022年度までのニュース

研究室のアクティビティ

研究中!レーザ造形した複合材料の組織と電磁気特性

今や身の回りにあふれている電磁気製品.磁気を通すには鉄(Fe)系の軟磁性材が使われ,一方電気を通しやすいのは銅(Cu)やアルミニウム,銀など.これらが複合化されて電磁気部品は製造されています.そもそもFeとCu,Alなどは溶接しにくく,通常はロウ付けなどで接合されます.私たちは電気接点部や特殊抵抗部分を直接レーザで造形することで,電気部品の多様化に応えるフレキシブルな製造法を目指し,様々な基材に対してCu合金や酸化物分散Agを溶着させた時の特性を調べています.
(日本銅学会および学内の研究奨励金を頂いています)
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学内の中間発表会・学会発表・論文勉強会

9月に行われる中間発表会は,卒研生が初めて教員の前で発表する機会です.ここではまだ研究データが出ていなくても,研究の背景やねらい,今後の研究計画について説明します.何のためにこの研究をやっているのか,どんな結果にたどり着きたいのか,どんなアプローチをとるのか,新しさはどこか...などが問われる緊張感のある場です.
一方,大学院生は学会に学生会員として所属し,講演大会で口頭発表やポスタセッションをしなくてはなりません.既存の研究を理解するため,写真のような論文勉強会も行っています.
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実験装置:顕微鏡サーモビュア

銅(Cu)やアルミニウム(Al)は電気を良く伝え,リチウムイオン二次電池の構部部材として欠かせない材料です.でもAlはとても活性な金属で接合が難しい.接合状態が良くないと電気抵抗が増加し,発熱などの損失になります.接合部の複雑なミクロ組織中を流れる電気が見えれば... ↓すごい装置があります!
(顕微鏡サーモビュアで見た通電中の接合試料のミクロな温度分布)
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教育活動や担当授業

2023年度の担当授業は,前期に3年生向けの「機械英語A」,後期に2年生向けの「機械設計製図2」です.ここではCADソフトを利用して,部品の3Dモデルから製作図の作成し,さらに部品どうしが干渉せずに機械が正しく動くように,コンピュータ上でアセンブリ(組立て)を行います.
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