ワイヤ3D造形したCu-Ni系抵抗材料の組織と電気抵抗の異方性

近年,純Cuのレーザ積層造形は産業界で活用され始めているが,各種電気材料の造形例がほとんど見られない.大電流計測用の複合抵抗材にはCu-Ni系合金が用いられる.その電気特性はNi濃度に強く依存し,造形時にはNi濃度42~48%の維持が必要で,この濃度域の合金はCN49と呼ばれる.昨年の研究で,複合抵抗材をワイヤ造形でNi濃度の希釈を抑え,規格値内で造形できたが,物性値より高い値を示した.本研究は高抵抗値となった要因として,ワイヤ造形した部分の異方性に注目し,方向による抵抗値の差異,また,Ni濃度や発熱量などの差異と抵抗値との関係を明らかにすることを目的とする.
Ag-SnO2接点材とCu合金基板とのレーザ接合に関する基礎研究

既存研究ではAg+Sn混合粉を大気加熱して作製したAg-SnO₂接点材にをレーザを照射すると SnO₂が粒子状に分散することが分かった.接点材として利用するため,基板と接合する必要がある.そこでCu合金基板とAg-SnO₂との接合も同時にできると思われる.本実験では,レーザ照射条件を変えることにより,どのような影響を及ぼすか,生成物と入熱量から調べる.
酸化ポテンシャル差を利用したAg接点材中のSn酸化物粒子合成

Ag接点材ではAg母相中にSnO2の酸化物粒子を分散させて強度の向上やスパークの抑制を図っている.エリンガム図によると,純金属の酸化ポテンシャルΔG0が負で大きいほど酸化物生成にともなうエネルギー利得が大きいことを示す.したがってSnとNiOの混合物を加熱すると,NiOが還元されSnO2が形成される.そこでAgとSnの混合粉末にNiOやCuOを固体酸素源として添加し,添加材の還元にともなう反応でSnO2粒子を合成した時の,通常のSn酸化による接点材組織との違いを明らかにする. 本研究の目的は Ag/Sn混合粉末圧粉体の内部酸化挙動を明らかにする.また接点部をレーザ加熱によるSn酸化物粒子の均一化を試みる.
表面酸化物を形成した軟磁性ケイ素鉄の電気抵抗

自動車の電装化が進む中,車載機器の種類や数の増加にともない各種電磁気部品も増加している.また軽量化のため電磁気部品の小型効率化も進められている.軟磁性材料の磁気特性向上のためには磁区を小さくする必要がある.磁区を構成する材料体積ごとに表面を絶縁する.黄らは圧粉磁心粉末に酸化物をコーティングし,Fe2SiO4を形成することで高い電気抵抗が発現することを報告した.そこで本研究の目的は,汎用軟磁性材料であるケイ素鉄に生成する酸化膜を制御し,高抵抗値を検討する.
Cu-酸化物系融体/ケイ素鉄の界面反応に関する計算・実験解析

今後の電動モビリティの普及において,電磁気部品にはより優れた体積効率が求められる.しかし,電磁気回路が小さく複雑になるほど,電気的あるいは磁束の短絡が課題となる.これらを局所的に遮断するため,私たちはCu液相を軟磁性材の狭所に溶浸させて,非磁性層を形成する方法を検討している. FeとCuは結晶構造や磁気特性に関して相反する性質を持つ.Cuの融点である1085℃以上ではfcc-Fe相とCu液相が共存するので,Cu融液を軟磁性材中に溶浸できると考えられる.また,軟磁性材は表面を絶縁して使用されることが多い.一般に金属酸化物は電気抵抗が大きく,金属と酸化物の混合融体は分離しやすい性質がある.そこで溶浸したCu液相から酸化物の液相(スラグ)を分離させ,ケイ素鉄との反応によって,Siを含む複合酸化物が形成されれば,非磁性Cu層が高抵抗化すると考えられる.本研究では,代表的な軟磁性材であるケイ素鉄とCuの界面反応によって生成される酸化物を明らかにする.
累積熱影響を受けるCr-V鋼のγ+α域加熱後の相変態と析出現象

レーザによる溶融積層造形技術は,高硬度な工具鋼へも適用され始めている.積層造形では,積層高さに応じて焼入れから焼戻しに相当する累積的な熱影響を受けて組織が複雑化する.特に工具鋼では,オーステナイト+フェライト2相域(γ+α)へ加熱されると,γへの逆変態と合金炭化物の析出が競合する.本研究では,工具鋼の加熱冷却により逆変態γの生成量を制御した組織の相変態を明らかにする.
レーザ照射された金属粉末の溶融挙動観察装置の試作

近年の自動車エンジンには、優れた燃費・排気ガス性能に加え、高い動力性能が求められる。そのため、熱効率と比出力を両立できる高速燃焼への取り組みが行われている。高速燃焼には、吸気抵抗を低減し、強いタンブル流を形成する吸気ポートが必要となる。近年はレーザ肉盛りバルブシートが採用され、ストレートポートを持つシリンダヘッドの製造が可能となった。レーザ肉盛りの問題のひとつに肉盛りの未溶着があり、特定の原料粉末で起こりやすいことが知られている。そこで本研究では、表面性状の異なる粉末について、その初期溶融からアルミへの溶着に至る現象を調査するため、レーザ溶融挙動を測定・観察する装置を試作した. ...実験装置のページはこちら