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  • #23:流行やブームに惑わされることなく揺るぎない基礎を築こう。

情熱主義

#23

流行やブームに惑わされることなく揺るぎない基礎を築こう。 情報学部 情報システム学科 竹内 義則 流行やブームに惑わされることなく揺るぎない基礎を築こう。 情報学部 情報システム学科 竹内 義則

情報システム学科の竹内義則先生は小学生の頃、親に買ってもらったパソコンに熱中した。世の中ではパソコンが徐々に家庭にも入り始めた頃のことだった。やがて雑誌に掲載されているプログラムを自分で組んで、動かしてみたりした。自分の思ったとおりにプログラムが動くのが、楽しくて仕方なかった。思い通りにうまくいくと、一人で「やった!」と歓喜した。それが先生にとっての「情報工学」への入り口だった。
やがて先生は進学した大学の研究室で「生体情報」に出会うことになる。
「生体情報」は、その後今日の研究につながり、そして今後日本が「人生百年時代」をめざすうえで欠かすことのできないキーワードとなる「福祉」につながっていく。

ただひたすら真面目に、諦めることなく研究に取り組んだ日々。

大学院で竹内先生が取り組んだ「生体情報」とは、人間の脳のしくみを解明して、そのしくみを「工学的」に実現するものである。例えば「モノを見る」という人間の持つ機能を工学的に実現することができれば、それは視覚障害者を支援することにつながる。
大学院当時の先生は、たんたんとひたすら真面目に研究に取り組んでいた。一つ一つ研究を積み重ね、成果を挙げることに集中していた。

竹内先生

そんな先生の様子に目を留めた研究室の担当教員は「博士課程に進んでみないか」とさらなる進学を強く勧めてくれた。その一言がなければ、今の先生はなかったかもしれない。
とはいえ、博士への道がそれほどたやすいものであるはずがない。研究成果が思うようにカタチになることはむしろ少ない。なぜ、結果が出ないのだろう、どうしたら結果が出るのだろう、夜中まで結果を求めて、悪戦苦闘したことも、一度や二度ではない。

「うまくいかないとき、そのままにしておくのって、なんか気持ち悪いですよね」と、先生は笑う。しかし、おかげでこのとき、「根性」が身に付いた。つまり「諦めない気持ち」だ。

また、博士課程在学中に担当教員が「3週間くらいアメリカへ行って学会に参加してこい」と勧めてくれた。正直、英語はそれほど得意ではなかったから、ためらうところがなかったわけではない。しかも一人旅であったし、不安も大きかった。まずは、現地の大学にアポを自分で取るところから始めた。アメリカに行ってみると現地の人の英語は文法通りの美しいものではなかった。文法などに縛られて、コミュニケーションを恐れていた自分が恥ずかしくなった。意思疎通をしようという「気合」さえあれば、人と人はつながることができる。むしろ、言葉なんて通じないほうがおもしろいのかもしれない。この経験を通じて「未知の分野に挑戦することは、何も恐ろしいことではない。むしろ、楽しいのだ」と思うようになっていた。

人と関わり、人を知り、蓄えた技術の知見を社会に生かす。

竹内先生

竹内先生が、現在取り組んでいるのは、一言でいうならば「福祉情報工学」だ。例えば聴覚が不自由な人が大学などで授業を受ける際、教員の言葉を文字に変換して受講生が見えるようにする。最近はスマートフォンなどで簡単に人間の言葉を聞き分けられる、というイメージがあるが、大学の授業では当然、専門的な用語が頻出する。さらに、専門分野ごとに専門用語があり、授業によって使用される語彙は異なる。このハードルを越えなければ、聴覚障害者の役に立つことは難しい。

また、視覚障害者が買い物をする場合、商品に表示された賞味期限や成分表示を見ることは困難だ。こんなときに、手元のスマートフォンを商品にかざすだけで、パッケージに記されている表示を読み上げることができれば、視覚障害者にとっては、救いになるだろう。

こうした研究のアイデアは、実際に聴覚障害者、視覚障害者の様子をつぶさに観察し、どのような障害のある人が、どのような場合に困っているのかを見極めることから発想されていく。
⼈間が、ごく⾃然にモノを⾒て、⾳を聞いて環境を認識する、その情報処理のしくみを研究し、コンピュータやロボットによって工学的に実現する。その技術が世の中の聴覚障害や視覚障害に苦しむ多くの人を救うことにつながる。
人と関わり、人を知り、蓄えた技術の知見を社会に生かす、これほど有意義な研究は他にないと先生は確信している。

情報技術は、ものすごいスピードで進化し続けている。

竹内先生

今AIが、新聞・テレビをはじめとして、さまざまなメディアを賑わせている。いわゆるブームだ。AIは先生の研究分野である「画像処理」においても、大きな変革をもたらすことが期待されている。ただし、AIはその基となるビッグデータが鍵となる。ビッグデータはいかによいデータを集められるかにかかっているが、それは簡単なことではない。AIを学びたいのであれば、大切なのは「基礎学力」であり、そのために必要なのは「数学」であることを覚えておいてほしいと先生は言う。ブームだからなんとなくAIに興味がある、というのでは通用しない。数学で鍛えられた基礎学力を持ってAIに立ち向かう、それほどの決意と熱意が必要なのだ、というのが先生のメッセージだ。

「基礎学力」は、あらゆる工学の基礎となるが、それを身に付けるのは、簡単なことではない。先生は「反復学習あるのみ」と断言する。授業では、予習復習をWEBでできるようにするなど、学習しやすい環境を提供している。スマートフォンでも学習が可能なので、学生たちは帰りの電車の中でも予習復習することができる。あきらめず、繰り返し反復する。成果は小テストの点数にたちまち表れる。「満点を取らないと悔しい」と言う学生もいる。その悔しさはさらに成長するためのモチベーションになる。知らず知らず、学生たちの中に、自分から進んで学ぶという意識が芽生えている。

情報技術の進化はものすごいスピードで進んでいる。半年もたたずに新しい技術が生まれては消えている。流行やブームに惑わされてはいけない。少々大変でも辛くても、決して揺らぐことのない盤石の「基礎」を、この4年間で築いてほしい。
その基礎は、今後、学生たちがどのような職業に就いたとしても、一生にわたって生き続けるのだから。

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