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情熱主義

#15

研究も教育も、喜びはかける情熱に比例して大きくなる。 工学部 機械工学科 宮本 潤示 研究も教育も、喜びはかける情熱に比例して大きくなる。 工学部 機械工学科 宮本 潤示

プラズマを用いた表面処理法などの研究を手がける機械工学科の宮本潤示先生は、大学時代に初めて「プラズマ」に出会った。固体でも液体でも気体でもないというプラズマの研究は、機械工学を学んでいた宮本先生にとっては新鮮な驚きだった。もともと教員になりたいという夢を持っていた宮本先生がその研究室で得たものは、研究の成果だけではない。研究者としての基本となる姿勢、研究の喜び、そして教員になるという夢をかなえるきっかけまでも。

自ら取り組む主体性と、困難を乗り越える喜びを手にした。

宮本先生の恩師が研究に取り組むうえで最もこだわっていたのは、「計画」だった。やみくもに研究していても終わらない、まずは綿密な計画を立てることの重要性を繰り返し教わった。ときには1ヵ月間にわたってひたすら計画だけを立て続けるということもあった。自分のことを「心配性だ」と笑う宮本先生には、今思えば、計画に重きをおく恩師は性にあっていたのかもしれない。

宮本先生

宮本先生が修士2年の時、恩師が研究のために1年間にわたってアメリカに行くことになった。その間、宮本先生は1人で研究することを余儀なくされた。インターネットのテレビ電話を使って相談をしたり、メールでのやりとりは頻繁にあったものの、宮本先生は心配で不安だった。しかも、まだ学生なので自由に使える研究費などはまったくない。研究室にあるものだけでいかに効果的に研究するかに四苦八苦する日々だった。しかし、恩師はまるで意に介さない風で、「自分の研究でしょう」と言う。人に言われてやるのではない、自分が選んで取り組んでいる研究なのだから、自分で計画を立て、自ら決断して研究に取り組む。研究者として欠かすことのできない姿勢は、この時にしっかりと身に付いた。

今も先生の研究テーマであり続ける「大気圧プラズマを用いた表面処理」は、機械部品、工具などの寿命を飛躍的に向上させるため、産業界からの期待も大きい。しかし、プラズマの生成制御が困難であることなど、まだまだ多くの課題がある。1回の実験に多い時には20時間以上、さらにその分析に数日を要することもある。それだけに、結果が出た時の喜びは大きい。自分が計画し、自らが決断した方法による成功ならばなおさらだ。今にして思えば恩師は、困難を乗り越えることで得られる喜びの大きさを教えてくれていたのだ。

苦労や努力を重ねた分だけ、研究も学びも面白くなる。

今、明確な将来像を持つことなく、大学へ進学してくる学生も少なくない。大多数の学生からは「やらされている」という印象を強く感じる。わからないことをそのままにしたり、学んだことがしっかり定着していないことで、彼らは学ぶ楽しさを得られていないのではないか。学生たちに学ぶことの楽しさを伝えたい。その思いから、最近になって先生が取り組み始めたことがある。

3年次に学ぶ工学実験に関するレポートを実験終了後に提出させることにした。実験を振り返り、文章にまとめていくことによって、学生には学んだことをしっかりと脳裏に定着させ、理解してほしい。先生にとっても、膨大なレポートを一つひとつ添削し、1人ずつ学生と話をするのは、並大抵な労力ではない。
しかし、学びはわかればわかるほど楽しくなり、興味が深まってくる。興味が深まってくれば、さらに学びたいという欲求が湧いてくる。そのことを学生たちに気づいてほしい。

宮本先生

研究も同じだ。学生は最初は言われたまま訳もわからず実験をやり始める。期待する結果が出るのは、せいぜい10回に1回。つまり10回やって9回は失敗する。やらされているのでは、すぐに嫌になる。失敗したら次はどうしよう、じゃあこうしてみよう、新しいやり方にもチャレンジしてみよう……そうしてようやく得た成功でおもしろさがわかる。苦労を重ね、自分が考えて工夫した分、おもしろさや、やりがいは倍増する。苦労や努力も含めて、それが研究の魅力だと先生は言う。苦労の向こう側にある喜びに気づいたものだけが、成長を手にすることができる。

学びの価値に気づく。だから、学びと真剣に向き合う。

学生が学びや研究への興味を深めるために、宮本先生が大切にしていることがある。それは自分が取り組んでいる学びや研究の価値に気づかせるということ。きっかけは宮本研究室の卒業生がもらした一言だった。社会人となった彼は、「もっと勉強しておけばよかった」と言った。やはりエンジニアとして現場で要求されるのは、高度な専門知識だ。それが社会人になって現場に入り、あらためて不足しているとわかったという。

「学生は、どうしても目の前の単位を取ることに終始しがちです。本来は社会で活躍するための大切な学びのはずなのに、単位が取れれば、それで安心してしまう。学生は自分が学んでいることの価値に気づいていないのです」。

自分の取り組んでいる学びがいかに社会で求められ、大切なものであることを理解したうえで、自分の学びにしっかりと向き合わせること。その努力が足りていなかったかもしれないと、卒業生が気づかせてくれた。

時間をかけて真剣に、とことん学生と向き合うからこそ、
学生の成長を見る喜びを手にできる。

宮本先生

学生一人ひとりが楽しく学生生活を送れているか心配になるから、時間をかけてコミュニケーションをとる。同じことを何度も何度も聞いてくる学生にも丁寧に答える。休んだ学生には家に電話をかけて保護者から様子を聞くこともある。考えようによっては過保護ともとれるのかもしれない。しかし、放っておくことは簡単だが、放っておくことがその学生のためになるとは思わない。「とにかく単位を取らせて卒業させたい」と思っているのでは決してない。

せっかく入学したのに、楽しくない、かなえたい夢がないというのではもったいない。自分は大学で学ぶことで、教員になる夢をかなえられた。そして研究を続けられる喜びも得た。だから、とことん学生と向き合うことで、学生が自ら取り組んでいる研究や学びについて、その楽しさに気づき、夢を追いかけられるようになることを願っているのだ。

研究も教育も苦労を重ね情熱を注いだ分だけ喜びが倍増すると信じて、今日も宮本先生は学生と向き合っている。

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