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情熱主義

#08

進化し続ける社会を、「論理」と「情熱」と「信頼」で、生き抜く。 工学部 建築学科かおりデザイン専攻 山口 一 進化し続ける社会を、「論理」と「情熱」と「信頼」で、生き抜く。 工学部 建築学科かおりデザイン専攻 山口 一

山口 一先生は、大手総合建設会社の技術研究所に長年勤務した経験を持つ。当時の研究テーマは室内環境。主に空気質の研究に取り組んできた。空気質と一言で言っても、におい・かおり、化学物質、微生物、アレルギー、微粒子などさまざまであり、温度や湿度、光など環境も大きく関係してくる。オフィス、病院、学校、工場など、それぞれの環境にそれぞれの空気に関わる問題があるが、共通しているのは、いずれも人の健康に関わるきわめて切実な課題であるという点だろう。そんな現実と、先生は向き合ってきた。

理学から実学へ。社会との密なつながりを求めて。

さまざまな現場を回り、そこにあふれる課題を解決するため、多くの技術開発を行ってきた。先生は論文を発表するなどの学会活動などにも取り組み、大学の教員との密な情報交換も欠かさなかった。企業人でありながら研究者でもあるという二足の草鞋(わらじ)で研究を続けてきたことが縁で、大同大学の教員へと転身することになった。

「企業における現場経験は豊富だと思っています。現場での課題を解決するためには、当然、そのための知識を身に付けることが必要です。私はそれこそが“実学”だと思っています。学生たちには、教科書の中の知識を、どのようにして現実社会に役立てていくのか、そのプロセスを伝えたい」。

先生は、学生時代ずっと“理学”を学んできた。理学とは、実学とは正反対の位置にある学問と言えるかもしれない。そんな先生が、なぜ、実学の道へ足を踏み入れたのだろう。

山口先生

先生は言う。
「根底にあるのは、学生時代に研究した成果を社会のために役立てたいと考えたことかもしれません。もちろん理学にも大きな価値があります。論文が学会誌などに掲載されることも社会に役立つことですし、50年100年という長いスパンで見れば、社会に役立たないものはないかもしれません。しかし、自分の研究を、今私が生きているこの社会において役立てたいと思ったのです。私たちが実際に生活する社会のさまざまな課題を解決し、社会を変え、社会を動かし、社会を救う、そんなことにつなげていきたいと思うようになったのです」。

人として、何を身に付けるべきか。

先生が折に触れて学生たちに「大切にすべきこと」として伝えている3つのワードがある。
それはギリシャの哲学者アリストテレスが人に対する説得のあり方について述べたとされる、「ロゴス(logos)」と「パトス(pathos)」と「エトス(ethos)」である。ロゴスは論理、パトスは情熱、エトスは信頼を意味している。

まず「ロゴス」で伝えたいのは、論理の重要性だ。論理的に考えることで、人にも理解されやすくなるし、自分にとっても、次に何をなすべきかを容易に考えることができる。思いつきではなく、問題がどこにあり、どういう方法で解決していけばいいのかを、論理的に考えるクセを身に付けてほしい。
「パトス」では、物事に情熱を持って取り組むことを考えてほしい。いかに情熱を持ってどれだけ好きになって物事に取り組むことができるか。
そして「エトス」。これは、信頼を意味する。人間として守らなければならないルール、あるいはマナー。例えば時間を守る、論文は人に読みやすいよう丁寧に書く、礼儀正しくふるまうなど。それらが、人と人をつなぐ「信頼」の源であると先生は言う。

山口先生

この3つが、学生として大切にしなければならないことであり、同時に人間として、社会人として求められていることだ、と。
中でも、「論理」に関して、先生はこのように言う。

「論理的な考え方というのは、誰にでもわかりやすいし、自分の中に“論理”を持つことで、何よりも“ぶれない”でいられる。思いつきの発想は、ほかの意見にすぐ影響されてしまう。しかし、“論理”さえしっかりしていればほかの人に何か言われても、ぶれることはない。“論理”は、自分の中の明確な“軸”と言ってもいいでしょう」。

積み重ねの上に生まれるオリジナル性。

もう一つ、先生が繰り返し学生に伝えるのは、「オリジナル性」だ。
「僕は恩師から、『誰かのまねだと言われないような仕事をしろ』と言われてきました。その恩師は、同時に、『すばらしいと思うものをできるだけまねろ』ともおっしゃったのです」。
「まねる」というのは、「コピーする」ということではない。たくさんいいものをまねて、そこに自分なりの考えを少しでいいから、プラスしていく。オリジナル性というのは、単なる思いつきではない。先人のいいものと自分の考えを組み合わせることによって化学反応が起こり、新たなオリジナルが生まれてくる可能性がある。

「だから私は『オリジナルは、積み重ねの上に生まれるものだ』と学生には伝えています」。学生が情熱を持って一生懸命に試行錯誤して考えを出してくれば、先生はその考えのよいところを褒めちぎる。学生の考えのよいところだけを見て、褒める。「ほんとうは叱るほうが、楽かもしれないですけどね」。そう言って先生は笑う。

今日も多くの学生たちが、先生の研究室を訪ねる。学生たちがいつ来てもいいように、また先生と気軽に対話できるように、先生の研究室は、いつも美しく整頓されている。

AIに仕事を奪われる未来など、ありえない。

情報通信技術は飛躍的な進化を遂げ、地球はどんどん小さくなっている。かつてのグローバル時代とは明らかに異なる新しい国際社会が生まれようとしている。また、AIの進化は、仕事のあり方、働き方も変えようとしている。AIがこれまで人間が担ってきた仕事を奪うという未来さえ、予測されている。
そんな中で、これからの時代に求められる力とは、いったいなんだろう。先生に聞いてみた。

山口先生

「まずは、国境を超えて、さまざまな人と交流すること。そのためには語学を身に付ける必要がありますが、それよりも重要なことは、多様な人を柔軟に受け入れるために、自分自身が多様な価値観を身に付けることです。多様化は技術の分野でも顕著です。日々、新しい技術や考え方が出現しています。それをどのように受け入れ、自分の価値観を進化させていけるか。さらに社会の変化も、ものすごいスピードで進んでいます。その変化についていくためにはどうしたらよいでしょうか? さまざまな人とつながるためには、どうしたらよいのでしょうか?」。

そう。その答えは、「ロゴス」と「パトス」と「エトス」。論理的に話し、何事にも情熱を持って取り組み、そして相手の信頼を勝ち取る。この3つを積み上げていけば、AIに仕事を奪われるなどという未来はありえない、先生は、そう確信している。

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