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  • #07:学生の情熱を引き出す、才能を目覚めさせる、それが大嶋流学生応援団。

[情熱]主義

#07

学生の情熱を引き出す、才能を目覚めさせる、それが大嶋流学生応援団。 機械システム工学科 大嶋 和彦 学生の情熱を引き出す、才能を目覚めさせる、それが大嶋流学生応援団。 工学部 機械システム工学科 大嶋 和彦

大嶋 和彦先生は「遊びの達人」だ。音楽への興味が高じてスピーカーを自作し、コンテストに入賞したこともある。もともとは「材料力学」が専門だったが、電子工作が好きで、メカトロニクスや制御工学に研究範囲を広げている。好きな方へ、楽しい方へ、先生の研究は広がっていく。そんな先生は、授業が終わるとさっさと帰っていく学生が残念でならない。
「もっともっと自分を楽しませてやろうよ」。
研究であれ、勉強であれ、楽しくなければ、はじまらない。

未知の可能性を信じて。

「僕は1年次の授業で高校生までに学んだ内容をもう一度確認して、みんなで同じスタートラインに立って、大学の勉強を始めようと考えています。しかし、ある時その授業で、なかなか内容を理解してくれない学生がいました。自分では懇切丁寧に教えているつもりなんですけど。ところが、そんな彼が、僕にもわからないような数式を使って、ロボット用減速機の歯車を自作したりしているんです。なぜ、高校の数学が苦手なのに、これができてしまうんだろうと、不思議でしょうがなかった」。

大嶋先生

大嶋先生が語る、その彼とは、工学部総合機械工学科(現 機械システム工学科)4年の林秀行さん。ロボット用減速機の小型化に関して、学生のうちに個人で特許を取得してしまった。
「彼は、僕にとって刺激を与えてくれる存在です」。
先生は、大学教育は、つまるところ「一品料理」である、と言う。一人ひとりの学生と向き合い、その学生がおもしろいと思うこと、楽しいと思うことを引き出し、そこをもっと伸ばしてやるために、手を替え品を替えて、学生を導いていく。そうすることで、学生の未知の可能性が引き出されることもある。
「どれだけ伸ばせるのか、伸ばせたのか。それが教員としてのやりがいになります」。
と大嶋先生は言う。

「ひいき」と「えこひいき」。

大嶋先生は、「自分は学生をひいきする」と言ってはばからない。しかし、それは「ひいき」であって、「えこひいき」ではない、とも。
「ひいき」というのは、本来「自分の気に入った者に対して肩入れする」といった意味である。これに対して「えこひいき」とは、肩入れしている理由が不明瞭で、公平ではないと思われる場合を言う。

つまり、先生は、理由なくひいきしているのではない。例えば、「ちょっとこれやってみて」と言う先生の投げかけに、即座に反応する学生と、なんでやらなきゃいけないの? という顔をする学生がいたら、おのずと先生との関係は変わってくる。言うまでもなく前者の学生に先生は肩入れすることになる。積極的にこれをやりたいという強い意志が感じられる学生に対して、先生は率直に肩入れをするのである。
このことを先生は、「教員は学生の写し鏡である」とも言う。「そこに写っているのは、学生自身である」と。一生懸命やっている学生の姿が、学生に対する教員の向き合い方という鏡に反映されているということだ。

大嶋先生

だからこそ、先生は、学生が自ら自分のやりたいことを人に伝えたり、積極的に問いかけたりすることが大切だと考えている。「僕に何かをぶつけてきてくれる学生に対しては、何が足りないのかを見つけてあげて、その学生に足りない部分を伸ばしてあげたい。手間はかかりますが、そのことに努力は惜しまない」。
さまざまな問題の解決を導き出すのは、「情熱」だ。「情熱」があれば、やりたいことは形になる。問いかけへの答えが得られる。だから先生は学生たちの「情熱」を引き出してあげたいと思う。

もっと踏み込んで、もっと距離を縮めて、話し合おう。

卒業研究では、学生が教員を選ぶことになる。学生たちは先輩やオリエンテーションなどを通じて、あらかじめ教員について学習する。大嶋先生について言えば、「厳しい」「歯に衣着せない」「おせっかい」という噂も聞こえてくる。決して肯定的な評価ばかりではない。大嶋先生は、学生が思うもう一歩先に踏み込むからだ。
考えてみれば、現代の社会においては、人と人との距離をいかにとるか、ということばかり気にしているように感じる。むやみにそこに踏み込んで距離を縮めていけば、「ハラスメント」と言われてしまう。「空気を読む」ことばかり、上手になっていく。しかし、人と関わっていかない限り、気持ちは伝わらない。

大嶋先生

教育に関して言えば、「教える情熱」が相手に伝わらなければ、「学ぶ情熱」は生まれない。先生は、たとえ学生たちに「おせっかい」と言われようとも、あえて学生との距離を縮めていくことを心掛けている。
「空気なんか読まなくてもいい、もっと踏み込んで話し合えば、わかりあえることもある。もっと飛び込んで来いよ、と学生たちにいつも言っています」。
そういうことをわかったうえで大嶋研究室を選ぶ学生は、だからこそ、先生が「面倒を見てくれている」「気にかけてくれている」という実感を得ることができる。

大学では、卒業研究の厳しさ、難しさに耐えかねて、そのまま研究室に来なくなってしまうという学生も少なからずいる。しかし大嶋研究室では、いまだかつてそのような学生は一人もいない。
「僕は、全ての学生に学ぶ喜び、楽しさを感じてほしい。そういう教育をめざしています。だから研究テーマも、学生がやりたいこと、おもしろそうだと思うことをどんどん取り入れる。その中で、例えば成績が芳しくなくて目立たなかった学生にも光が当たり、宝石を抱いている学生を見つけ出すことができるかもしれない」。
小中学校でやる気のスイッチが入って、夢や目的をもって希望する高校や大学に行くという人はすばらしい。ところが、高校までほとんどスイッチが入らないまま、大学生になった学生もたくさんいる。大学の4年間で、それまで隠されてきた才能や情熱を引き出すことが、実は大学には求められているのではないか、と先生は考えている。

学生の進む先の先まで見つめて、
徹底的に寄り添ってキャッチボールを続ける。

大嶋研究室に配属になった林秀行くんは言う。
「大嶋先生は、なんかちょっと違うんですよね。厳しい先生はほかにもいますが、大嶋先生はただ厳しいのとは違う。先生が怒るときは、その場限りの怒りという感じがしない。僕の進もうとしている先の先まで考えて、厳しく接してくれていると思えるんです」。
先生は、学生が何を求めているかを常に考える。例えば、「論文を書きたい」と言うのであれば、「なぜ論文を書きたいの?」と聞く。すると、「博士号をとりたい」と学生は答える。「なぜ博士号がとりたいの?」と先生は学生のその次の言葉を聞いて、さらに学生の思いに近づいていく。学生の思いが手に取れるようになるまで、先生は、学生とのキャッチボールを続ける。

大嶋先生

ただ教えるだけではなく、ただ厳しく接するだけではなく、そこには学生の歩もうとしている人生に情熱をもって寄り添う優しさがある。
「基本的に僕は、学生の応援団なんです。がんばっている人をチアしたいと思っています」。

「チア」には、「応援」という意味のほかに、「励ます」「元気づける」という意味がある。ただ応援するだけではなく、その学生の情熱を引き出す、才能を目覚めさせる、それが大嶋流学生応援団である。

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