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[情熱]主義

#06

「人間が好き」。そんな先生の愛情と温かみが、学生の新しい世界への扉を開く。 情報デザイン学科プロダクトデザイン専攻 横山 弥生 「人間が好き」。そんな先生の愛情と温かみが、学生の新しい世界への扉を開く。 情報デザイン学科プロダクトデザイン専攻 横山 弥生

「私は、何事も回り道をしたほうがおもしろいと思うんです。いろいろなものを見ることができるし、いろいろな人と出会うことができる。落ち着いてじっくり考えることで見えてくることもあります」。
横山弥生先生は、言う。でも、今の若者は、すぐに答えを求めようとする。急いで答えを出さなきゃいけないという先入観が強い。それを一度、外してあげたいと横山先生は思う。
「そうすれば、すごく、自由になれると思うんです」。

本当にやりたいことを見つけるための2つのベクトル。

本当にやりたいことと出会うのは難しい、とよくいわれる。自分が楽しいと思えることなんてそんなに簡単に見つからないと。そもそも、すぐに見つける必要はあるだろうかと横山先生は思う。その時その瞬間を一生懸命取り組んで、結果回り道をすることになったとしても、またそこから興味のあることに向かえばよいではないか。でも、ただやみくもに突き進むだけではやりたいことに気づけない。

横山先生

自分のやりたいことを見つけるために大切なのは、一つは「自分を振り返る」ということ。例えば、まだ小さかった頃の自分を思い返してみる。自分の心の奥の、小さかった頃の記憶の中に、気づきがあるかもしれない。子どもの頃は、先のことは考えず、目の前のことにワクワクしながら夢中になれたはずだ。純粋に夢中になれた頃の自分は、今の自分に本当にやりたいことへのヒントをくれるかもしれない。

もう一つは、「人とのつながりを築くこと」。人付き合いが苦手、自分の意見をうまく伝えることができないという人は多い。でも、人とのつながりを閉ざしてしまうと、新しい発見はない。人とのつながりの中で自分を客観視することでこそ、新たに発見できることがある。

本当にやりたいこと、自分が楽しいと思うことを見つけるということは、実は「自分を振り返る」「他者とつながる」という、2つのベクトルから生まれてくるのだと、先生は言う。横山先生も、この2つを繰り返して「今」がある。

「自分を振り返る」、「人とのつながりを築くこと」で将来を見いだした。

「私は小さい頃から絵を描いたり、モノをつくったりするのが大好きでした」。そんな横山先生を、親はちゃんと理解していた。そんなことやめて勉強しなさい、と言うのではなく、子どもの多様なあり方を認めて、絵を描いたりモノをつくったりする世界が好きならその方向へ進みなさいと、背中を押してくれた。絵を描いたりモノをつくったりしている瞬間が一番夢中になれた。

横山先生

絵を描くことが好きだったから、美術大学に進学した。大学の4年間で、それまで出会うことのなかった、さまざまな人との出会いがあった。いろいろな夢を持った人、いろいろな地域の人、いろいろな学びをする人…。その出会いは先生にとって、今も貴重な財産の一つだ。

大学3年生の時に、ある先生の紹介でデザインのアルバイトを体験した。デザインには制約があるが、その中で自由に考えることが楽しくてのめり込んだ。デザインって、すごくおもしろい、これを職業にしたい。そんな思いを抱き、大学を卒業した。幼い頃から夢中になれたことを追い求め、そこでの人とのつながりが自分のやりたいことに気づかせてくれたのである。

いろいろな回り道をしたからこそ、「今」がある。

まだ、コンピュータが一般的ではなかった頃、日本で初めてのコンピュータグラフィックス(CG)の専門学校が開校され、そこで絵を教える職を得た。絵を描くことは好きだったが、コンピュータはまるでわからなかった。当時、コンピュータで出せる色は、わずか8色。横山先生は絵を描く自分には縁がないと思っていたコンピュータを勉強した。すると、CGは、自分の力以上のモノを出し、今までの自分とは別の自分がいて、違う世界を見せてくれるような気がした。それが楽しくてCGの勉強に夢中になった。

アナログからデジタルへ、先生はどんどんのめり込んでいった。数学は大嫌いだったが、コンピュータをやるなら、数学もある程度究めなければと思った。
数学との本格的な出会いも、デザイナーとしての先生を語る上で欠かせない。立体的なモノの美しさには数学が大きく関係しているからだ。例えば、日本の建築の美しさには、数学的な理由がある。奈良の法隆寺は、正面からの姿も、下から見上げた姿も美しい。金堂は2階の幅と1階の幅が1対1.4、五重塔は最上層の屋根と最下層の屋根が1対1.4。この1対1.4の「白銀比」こそが、1300年前の法隆寺の美しさの理由だ。

ロマネスコ

また、「ロマネスコ」という野菜も美しい。花蕾が幾何学的な配置となっていて、個々の蕾が規則正しいらせんを描いて円すい形となり、また円すいがらせんを描いて配列し、これが何度も繰り返されて、自己相似となっている。このような形状をフラクタル形状というが、これは数学の一つである幾何学の概念である。植物という自然がデザインするカタチにも数学的な美しさが宿っている。

ロマネスコ

「デザイン」「CG」「数学」。興味のあるものに夢中で取り組んだ結果、その道を究めることになった。CGデザイナーとして活躍する傍ら、大学の講師や映画会社に勤め、CGを担当したりもした。大同大学に情報学部が創設されたことを機に、大同大学の教員の職に就くチャンスを得た。自分の好きな研究を続けながら、自分のスキルや経験を学生に伝えることができる。天職だと思った。さまざまな人との出会いや縁が、先生にとって、いつも新しいステージへの挑戦となった。これからもそうだろう。これまで回り道だったかもしれないが、回り道を楽しんだからこそ「今」がある。今は自分の経験を伝えるべく、学生とのつながりを大切にしている。大同大学に赴任して、もう15年になった。

本物と出会う心が震える体験、
鳥肌が立つような感動を学生と分かち合いたい。

人とのつながりを大切にすること、人を好きになることが、横山先生の人生を豊かにし、学び続ける動機となった。それは、横山先生が学生に伝えたいと思う重要な部分を占めている。もっと人を好きになろう。もっとさまざまな人との出会いをつくろう、と先生は優しいまなざしで学生に呼び掛ける。
大学の中でのさまざまな出会いだけでなく、学外へも広げていけば、もっともっと世界が広がるはずだ。その新しい世界を学生に見せてやりたい。

横山先生

横山先生が取り組んでいるさまざまな地域連携プロジェクトの目的は、そこにある。例えば、京都の伏見稲荷にあるお茶屋さんのためのグッズ提案プロジェクト。岐阜県白川町の東濃ひのきを使った木工製品提案プロジェクト。「アクティブストリート」と題する名古屋市南区柴田商店街の活動をサポートするプロジェクトなど。さらに、ミラノ工科大学との連携プロジェクト、ニューヨークとリスボン、大同大学を結ぶリレー展の開催など、人との関わりを大切にする横山先生は、プロジェクトが増える一方だ。学生も複数のプロジェクトの掛け持ちで忙しくなるが、それでもプロジェクトに参加しようという学生は後を絶たない。最初は後ろ向きな学生も先生に愛情いっぱいの笑顔で背中を押されて、いつの間にかプロジェクトに参加している。

もう一つ、先生が学生に呼び掛けることは、美的感覚を養うために本物に触れるということ。デザインを志す学生にとって、美しいモノを感じ取る感性を磨くことは言うまでもなく重要だ。本物にしかない匂いを感じ取ってもらうために学生を連れ出す。本物と出会う感動を、鳥肌が立つような心が震える体験を、学生と分かち合いたいと思う。

愛情と温かみ、ふるさとのような居心地の良さ。

先生が手掛けるプロジェクトは、手間のかかる仕事だ。しかし学生一人ひとりにかかる手間は、いつしか愛情へと変わっている。人間が好きだからこそ、生まれる愛情であり、人間が好きだからこそ、横山研究室には人と人とのつながりが生み出す温かみがある。その温かみは、学生にとって、また卒業生にとって、懐かしいふるさとのような居心地の良さにつながっている。

学生がこんなことを言った。
「定年になって大学を退官になっても、先生は点滴をしながら廊下を歩いていて、いつも僕らを笑顔で迎えてくれるような気がする」。
そんな学生の冗談も許してしまうほど、先生の包み込む力は、優しく、温かい。

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