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#20

好きなことを続けるこだわり。あきらめない粘り強さ。それがきっと、あなたの力になる。 教養部 数学教室 上野 康平 好きなことを続けるこだわり。あきらめない粘り強さ。それがきっと、あなたの力になる。 教養部 数学教室 上野 康平

教養部で数学を教える上野康平先生は、小学校入学前から2年生まで、父親の仕事の都合で、アメリカで暮らしていた。帰国して日本の小学校に通い始めると国語がほとんど理解できなかった。
ただ、算数は理解できた。「数字」は世界共通、足し算も引き算も答えは1つなのだ。
先生の「数学好き」は、このときから始まっていた。国語は人によって考え方が違うし、答えが1つではないこともある。歴史も根拠となる資料の記述は当時の支配者に都合よく書かれている場合も多く、史実は見方によって異なる。その点、数学はシンプルだ。
好きな数学を「深く追求すること」にこだわり続け、めざしていた大学教員になることを実現した、上野先生の今までを振り返る。

純粋に数学と向き合いたい。

小学校以来の数学好きは、中学高校へ進んでも変わらなかった。大学でも数学を学びたいと考えた。しかし、周囲の反応は厳しいものだった。
「数学はツブシが利かないから工学部にした方がいい」、塾の先生はそんなことを言った。つまり、就職で苦労するぞ、というアドバイスだった。
しかし、先生は数学の「応用」とされる工学には興味が持てなかった。純粋に数学と向き合いたかった。もっと深く、数学を極めたいと思った。

上野先生

数学を続けていく中で、指導教官に恵まれた、と先生は振り返る。中でも印象に残っているのは、大学院の指導教官だ。その先生は、厳しいと評判だった。上野先生は、いつも緊張してセミナーに臨んだ。その先生に見限られたら、数学を続けていくことはできない、と思い込んでいた。

しかし、その努力が報われたのか、熱意が通じたのか、厳しいと評判の先生は、深く知れば知るほど親切でフォローも手厚かった。こちらの努力をきちんと認めてくれる、そういう人だった。好きなように研究に没頭する環境を与えてくれて、辛抱強く学生の成長を見守ってくれた。

もちろん、何度も折れそうになったことがある。人一倍の努力をしても、数学を断念する人はたくさんいる。そんな厳しい世界なのだ。
しかし、その先生はいろんな形で上野先生を支援してくれた。博士課程に進んでしばらくたったときのことだ。結果が出せなくて煮詰まっていた。そんなとき、先生が「ちょっとアメリカに行ってみないか」と声をかけてくれた。アメリカでは大学院で学び、現地の数学研究者と交流した。それはとてもいい刺激になり、研究の転機にもなった。
やがて上野先生は大学教員をめざすことになるが、その狭き門をくぐり抜けることができ、今日あるのも、その先生が根気強く育ててくれたおかげだったと思う。

数学の魅力はアートと同じ?

上野先生は、数学の問題を解くのに、パソコンは使わない。常に紙と鉛筆と、自分の頭。だから、どこでもできる。問題を解いている時が、先生にとって、幸せな時間だ。

紙は何枚も何枚もたまっていく。ある程度たまったら整理して、大事なところをまとめ直す。いったん立ち止まって振り返る。そうやって解を得るプロセスは、アーティストが1つの作品を仕上げていく工程や、ビジネスマンが1年間かけてプロジェクトを成功に導く、そんな感じに近いと先生は思う。そこには、多くの苦労が伴う。挫折もあり、失敗もあり、到着地点が見えないこともある。しかし、そんな苦労を伴うからこそ、解を得た時の喜びは大きい。幸せは、いつも苦労を伴って、やってくる。

上野先生

先生が現在、研究テーマとしているのは、複素解析学の一分野である「複素力学系」。漸化式が与えられた「数列」の挙動を研究している。漸化式が1次式のときは高校生でも解けるほど簡単だが、2次式になると一気に難しくなり、数学界でも、その全容はいまだに解明されていないという。

先生にとっての数学の魅力、それはいったいどこにあるのだろう。一般的に、世の中では「実数」しか扱わないから、「複素数」を日常生活で見ることはない。しかし、定理を複素数によって書き直すと、すごくシンプルになることが多いという。2次方程式の解の公式は、実数だと3通りに分けて説明する必要があるが、複素数で考えれば、式は1つで足りる。そのシンプルさが、複素解析学の美しさであり、魅力だ。

多くの人が難しいと考える数学だが、ある人がシンプルに造形されたモノを見て「美しい」と感じるように、先生の感性は、「複素解析学」を見て、美しいと感じている。
また、実数しか知らない人にとっては、公式は複雑でやっかいなものだが、複素数まで知っている人なら全体像を見ることができるから、「あ、こんなに簡単な形だったんだ」という発見もある。「複素解析学」には、モノの見え方さえも変える力がある、と先生は思っている。

自分で考える。

上野先生

上野先生は、今、目の前にいる学生一人ひとりと向き合い、一人ひとり異なる個性を見極めて、自分なりの指導をしていきたいと思う。
大同大学の教育システムはしっかり整ってはいるが、上野先生は、さらに独自の手法を取り入れて授業をしている。先生の授業の目標は、「わかった気分」になってもらうこと。「わかった気分」と、本当に理解できるというのとは、もちろん違う。しかし、「わかった気分」が得られれば、その後、学生たちは例題を解いてみよう、公式をしっかり使えるようにしようという思いを持つに至る。それは自ら学ぶことへの動機づけになる。

「オフィスアワー」といって、学生と先生が1対1で向き合う時間が設けられている。学生がどこがわからないのか、どこでつまずいたのか、それを明らかにして指導していくことができる貴重な時間だ。ここで先生は、「わからないことはわからない」、と言える関係づくりを大切にしている。ただし、質問の仕方について「1から10まで全てを聞くのではなく、1回自分で考えてから、わからないところだけ聞きに来ること」とアドバイスする。ほんの少しでも「自分で考える」というステップを踏めば、オフィスアワーの時間も節約できる。有効な時間の使い方は、自分で考える習慣からも育まれるはずだ。

好きなことを続けるためのこだわり。

振り返ってみると、先生は「あきらめない人」だった。つまりこだわりの強い人だったのだ。
例えば、大学を選ぶとき、塾の先生には、数学科へ行くことを反対された。でも、譲らなかった。大学院で研究テーマを決めるときも、指導教官があれこれアドバイスしてくれたのだが、自分が気に入ったテーマに固執した。
そういうこだわりとは、「自分は数学がどれだけ好きか」ということの証になる。

上野先生

とはいうものの、いくら好きであっても仕事にするのは難しい場合もある。しかし、迷わず突き進んだからこそ手に入るものもあると思う。だから学生たちには、あきらめずに好きという気持ちにのめりこんでほしい。

「今はインターネットでどんな情報でも簡単に手に入るから、答えが見えてしまった気になる。だから自分で考えない。でも、自分は何が好きなんだろう、ともっと自分に問いかける時間が必要。一度、インターネットを遮断して、自分だけの時間をもって、ゆっくり考えてみるといいと思う」。

大同の学生はまじめで素直、ちょっと内向的なところがあると上野先生は感じている。ただ、内向的なことは、個性に過ぎないのだから、それで臆する必要はない。人それぞれでいい。ただ、せっかく大学で学ぶのなら、好きなことをかなえる希望とやる気を持って入学し、それを続けるこだわりを持ってほしいと先生は言う。
「数学を学ぶことは、粘り強く考えること。先生に答えを聞いて、レポートの点数を多少上げることに力を注ぐのではなく、粘り強く自分で考える習慣を身に付けることができれば、就職活動もあきらめることなく、勝ち抜いていくためのベースになるはずです」。

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