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#18

人は変わることができる。自信を持ち、自分を信じることで、人は成長できる。 工学部 機械システム工学科 吉田 昌史 人は変わることができる。自信を持ち、自分を信じることで、人は成長できる。 工学部 機械システム工学科 吉田 昌史

さまざまな大学で教員を務め、多くの学生と接してきた機械システム工学科の吉田昌史先生は、それらの出会いや体験こそが、大学教員としての現在の自分を支えている、という。
一人ひとりの学生に対する、心のこもったまなざしは、彼らがさまざまな体験を通して自信を身に付け、自分を信じ、そして成長していく姿を見守る。大学へ夢や希望を持って入学してきた学生たちに寄り添い、その夢や希望を実現するために、先生はこれまで体験して得られたもの全てを注ぎたいと考えている。

学生時代の苦手分野が、現在の専門分野に。

吉田先生は大学では機械工学の道に進んだが、高校時代に機械工学を選ぶきっかけや理由が特にあるわけではなかった。モノを作ることは好きだったが、化学も好きだった。興味の対象は幅広く、建築も勉強してみたいと思った。いろいろなことに興味を持ち、やってみたいと思う中で、選んだのが機械工学だった。
機械工学を学び始めると苦手な分野に出会ってしまった。「材料」と「加工」だ。今現在の吉田先生が専門とする、まさにその分野である。

吉田先生

「材料」の授業では2回くらい単位を落とした。さらに「加工」は、最も苦手な科目で、学ぶこと自体が苦しかった。

しかし、先生はあえて、苦手分野と向き合うことを決め、最も苦手とする「加工」を専門とする研究室へ入った。苦手分野に挑戦しようと思ったのは、自分自身の壁を乗り越えたいと思ったし、何より恩師となるその担当教員が熱心に向き合ってくれたからだ。もちろん、容易な道ではなかった。実験レポートの提出では、担当教員による口頭試問で毎回ダメ出しをされ、突き返され、繰り返しやらされた。それが「粘り強く、答えを求めに行け」という担当教員からのメッセージだった。

今振り返ると、そのおかげで、苦手で嫌いで一番苦しかったものが一番理解できるようになった。当時の実験で何をしたのか、今でもその内容を全て話すことができるくらい覚えている。結果的には「材料」も「加工」も、好きになっていた。
あの、苦手で嫌いだった分野を、先生は自分のものにすることができたのである。

自信を持ち、自分を信じることの大切さ。

学生の時の体験で忘れられないことがある。
英語なんて全然できないにもかかわらず、初めて国際学会へ出席した時のことである。担当教員からは、「発表の時には、一切助けないからね」と言われていた。プレゼンテーションは、練習を積み重ねればなんとかなった。しかし、ディスカッションはそうはいかない。外国の方にいきなり話しかけられると、もうパニック状態だ。助けを求めようと担当教員の方に目をやると、知らん顔をしている。それまでの人生で最も大きな恥をかいた。それでも、冷や汗をかきながら10分、15分耐え抜いた経験が、先生の転機となった。

もともと積極的に動くタイプではなく、「どうせ自分はダメだろう」とマイナス思考で考えるタイプだった。それが、国際学会での出来事を経て考えが変わった。「あれを乗り越えたのだから、次は大丈夫だろう」と考えられるようになり、何にでもトライするようになった。「失敗してもいいんだ、恥をかいてもいいんだ」と思えるようになり、臆病だった自分を克服できた。自信を持ち、挑戦することの大切さを、先生は学んだ。

学生一人ひとりへのまなざしの意味。

吉田先生

吉田先生は修士課程を修了すると、一度は企業に就職したが、博士課程に進みたいという思いを入社後も打ち消すことができなかった。そのせいだったのだろうか、企業には馴染めなかった。本当に自分のやりたいことは、ここにはない、そんな思いを抱える日々が辛く、悩ましかった。このままではダメになる、そう思い、勇気を出して企業を退職し博士課程に進むことを決断した。

博士課程を終えた後は、さまざまな大学で講師を勤めた。
実は、そのころに、教えていた学生が突然この世を去るという不幸な出来事があった。

いつも、教壇から見て右端の前の席に座っていた、その学生の抱えていた悩みに、吉田先生を含めて、誰も気づくことができなかった。もし、気づいて、声を掛けていたら、その学生を救うことができたかもしれないと今も後悔している。
自分が企業に勤めていた時、抱えていた悩みは自分で決断し、解決することができた。それは、たまたま挑戦することの大切さを身をもって経験していたからかもしれない。皆が勇気を持った決断ができるわけではない。この経験が自分の一番の変わり目だったと先生はいう。だから今、先生はできるかぎり、一人ひとりの学生の変化を見て、声を掛けることを自分に課している。

人生を支える、人と人とのつながり。

先生が取り組んでいる研究テーマは、金属材料の表面処理だ。既存の材料が持つ性質を改善したり、新たな性質を付与したりしようとするものだ。表面を変化させるだけで、これまでにない新たな材料を生み出すことができる。最近では、ある自動車会社から、「熱を逃す表面処理」についての研究依頼があった。急速に増えつつある電気自動車のバッテリーから放出される熱をいかに逃すか、という課題への取り組みである。
表面処理技術は自動車産業だけでなく、スマートフォンなどのガラス面を強くすることなどにも応用されている。さらに、航空宇宙分野、医療分野、電子機器などの分野にも応用は広がっている。
「大学の先生の中には、遠い未来に向けて最先端の技術に取り組む方が多くいらっしゃいます。もちろんそれは重要な研究ですが、私の研究は、もっと近い未来における問題解決をめざしています。日本の産業は中小企業が支えていると言われていますが、今まさに中小企業の方々が困っていることを解決したり、望んでいることを実現することが私の研究における基本です」。

吉田先生

この研究は、学生たちにとっては一見地味に映るかもしれない。最先端の華々しさはないかもしれない。しかし、手の届かない遠い未来ではなく、目の前にあるさまざまな課題を解決し、課題を抱える多くの中小企業に喜んでもらうことができる、やりがいに満ちた研究である。先生の研究室に配属となって、そのやりがいに目覚めた学生も少なくない。
とはいえ、学部研究室でのわずか1年間、大学を通してみても4年間で学生たちが身に付けることができることは限られている。だから先生は思う。

「専門知識はもちろんですが、中でも大切なのは、人と人とのつながりです。それは縁や絆とも言い換えられますが、これらを培った経験が、生きていくうえでかけがえのない財産となります」。

先生のところへ、以前教えていた大学のOBが顔を出した。彼は職場の悩みをとうとうと先生に語った。上司にも、同僚にも、あるいは親にも相談しづらいことが、先生には話せる。短期間でも、同じ研究室でつながっていた絆が、そうさせたのかもしれない。満足そうな顔をして帰っていく彼の後ろ姿を見て、かつて企業に勤めていた頃に悩んだ自分の姿が重なる。あるいはこの世を去った学生のことが思い出されることもある。そんなつながりが、学生の歩む人生を支える源となる。

自信を身に付けさせる指導。

学生は一人ひとり異なる個性や能力を持っている。それを無理に平均化してしまうのではなく、一人ひとり伸ばせるところを伸ばしていく。したがって先生の指導も、学生一人ひとり全て異なる。一人ひとりの顔が見えると、いいところも悪いところも見えてくる。手間も時間もかかるが、先生にとって、一人ひとりを見ながら、その成長を楽しむことが、教育のやりがいにつながっている。

吉田先生

先生は一人ひとりの学生の名前を覚えていることはもちろん、細かく観察もしている。学生の得意不得意も把握している。「髪の毛切ったな」とか「この前、原付きで走ってたな」とか。そんなことを言うと、学生は驚く。しかし、学生にとってきちんと名前を覚えてくれて、見ていてくれるという思いは、じゃあがんばろうという気持ちにつながっていくと確信している。
また、学生が苦手とすることに関しては、あえて「やってみよう」と声を掛ける。当然学生は「できない」という。「じゃあ、一緒にやってみよう」と手を差し伸べる。
学生にさまざまな体験の機会を与えることにも力を入れている。絆を育むきっかけになるはずだから。

大学院生だったら、必ず一人一回は海外での国際学会に参加する機会を与える。かつての先生のように、行く前は「どうしよう、どうしよう」と、ビクビクしていた学生たちが、終わってみると、見違えるように自信を身に付けている。

「努力次第で自分にもできるんだ」、そう思える機会を学生一人ひとりに与えたい。
そんな指導の一つ一つに、先生のこれまでの、さまざまな経験が生きている。多くの人との出会いがある。辛いことも悩んだこともあった。しかし多くの人に助けられて、先生の今がある。その体験で得たものを、全て学生たちに注ぎたいと思う。
「でも、僕だけが一生懸命がんばっているわけではありません。大同大学は、教員・職員の皆さんが学生に対して非常に熱心です。いろいろな大学を見てきましたが、本学が一番すごいと思います。例えば普通、キャリアセンターなんて学生はできれば避けて通りたいところですよ(笑)。ところが本学では、皆が行きたい、というんですから」。
さまざまな大学を経験した先生は、思いを自身と同じくする大同大学の可能性を信じている。

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