におい・かおり測定演習1・2・3(1:2年次後期/2:3年次前期/3:3年次後期)
測定方法を学びながら、論理的な説明と計画・実行していく力を磨きます。
「におい・かおり測定演習」では2年次後期、3年次前期・後期にわたって開講され、においの測定方法について学びます。対象物によって異なるにおいの測定方法の一つひとつを授業と実験を通じて学習し、身に付けた知識と技術は国家資格である臭気判定士取得にも役立ちます。
現在の分析・検査業務の多くが自動化されています。正しい手順を踏めば、測定結果としての「数値」が示されます。重要なのはその数値をどう捉えるか。それが「におい」の測定の面白いところであり、難しいところなのです。例えば、納豆のにおいは菌が繁殖して発生するにおいです。それを「くさい」と感じる人と「納豆のおいしそうなにおい」という人がいるように、感じ方も人やタイミングによって異なります。そのため、検査ごとにどんな理論でその数値を導き出したのか、何を根拠にその数値を結果として示すのか、結果に対して相手を納得させられるだけの論理的な説明が求められます。
さらに授業では、なぜにおいの測定が社会的に求められるのかという社会的背景や、実験器具の価格や実験にかかるコスト・収益などの経済的観点などについても学び、測定について多角的に理解して、分析技術者・臭気判定士としての素養を身につけます。
測定の背景を知り、方法論を身につけ、結果を導き出す。そのうえで、結果を論理的に説明できるよう考察を重ね、実際にレポートにまとめてみる。その一連の流れをこの授業で計画的に実行することで、においの測定のプロとして、より良い住環境づくりに貢献する力を身につけることをめざします。
かおり成分と調香2・3(2:1年次後期/3:2年次前期)
さまざまなかおりを体系的に理解し、表現することを学びます。
「かおり成分と調香」では、さまざまなかおりを嗅ぎ、そのかおりを言葉で表現します。言葉で表現することで、ほかの人に伝えたり、共有したり、記憶しやすくなります。そうすることで、さまざまなかおりを体系的に理解し、蓄積するのです。2年次後期以降では装置を使ったかおりの測定方法を学び、人により表現の仕方が異なるかおりについて、客観的かつ論理的に説明することが求められます。その前段階として、さまざまなかおりを比較し、定性的かつ感覚的にかおりを表現することを学びます。多くの表現・ボキャブラリーを用い説明することが、装置を使った客観的な測定においても必要になるからです。
「かおり成分と調香2」では、500種類にも及ぶとされる天然由来の「香料」を扱います。動物系もありますが、利用するのは、主に花、果実、根、葉などから抽出される植物系です。「かおり成分と調香3」では、さまざまな原料から合成してつくられる数万種類におよぶ合成香料について、その原料や製造法を学びます。また、自ら香料を選び、調合していく「調香」についても学びます。これらもかおりを体系的に理解し表現することを目的に行われます。
「かおり」を表現する技術を磨くのは、授業中だけではありません。普段の生活でも、身の回りにあるさまざまなかおりを嗅いで、自分なりに表現してみます。こうしてボキャブラリーを増やしていく、日常の努力も大切です。例えば「かおり」を「色」や「味」で表現するなど、表現には無限の方法と広がりがあります。
高ストレス社会と言われる現代において、「かおり」の果たす役割が注目される中、香粧品の香料を調合するパフューマーや、食品香料を調合するフレーバリストなどの活躍の場が広がっており、これら専門家の道の第一歩をこの授業で踏み出すことができます。かおりで人々の生活を豊かにし、幸福をもたらす専門家になるためには、かおりを体系的に理解し、豊かな表現で説明できる能力が必要なのです。
生活環境学1・2(1年次) 生活環境評価演習1-3(2・3年次)
人を取り巻く空間環境をより快適にする、住環境の管理者として働くことを視野に入れています。
「生活環境学1・2」では、快適な空間の実現に必要な環境の評価や分析方法と、さまざまな問題への正しい対処法の基礎を身につけることを目的として、環境を構成する重要な4つの要素である「空気」「熱」「光」「音」について学びます。まず「生活環境学1」では、においやかおりと密接な関わりを持つ空気について、室内空気汚染、浄化、換気などを普段過ごしている身近な空間の事例を挙げながら学びます。例えば、飲食店などで「分煙」を考える場合、喫煙スペースは店内のどこに置くべきか、店内の空気の流れなどから考えます。また、かつて「省エネ効果」を期待するあまり、暖気や冷気の排出を嫌って、換気量を減らしたため、空気が停滞し、においがこもったりする要因となったことなど、生活環境の歴史について学ぶことで、肯定的に捉えがちな「省エネ」にもこのような側面があることを知ります。
「生活環境学2」では、「熱」「光」「音」などについて学びます。一見、においやかおりと関わりのないように思われる熱や光、音などの要素も、実は人間の快適な環境を考える上では深い関わりがあることを知ることができます。
「生活環境学」で学んだ環境に関する要素の測定方法や評価方法、評価のための単位、さらには法律に定められた基準値などの知識を生かして、実際に環境を測定・評価する実習授業が「生活環境評価演習」です。例えば、実際に教室内のCO2濃度を測定し、換気扇をつけた場合の濃度と比較して、どのように変化するのかを調べます。このとき、測定値には「器差」という問題がでてきます。測定する機器が異なると測定値が変わる場合があるということです。よって、測定データをうのみにせず、器差補正の方法も学び、実施することで、データの信頼性を高めていきます。データの重要性を知り、より精度の高い測定をしていく姿勢は、測定者として、またにおいやかおりに関わる者の責任でもあるのです。
「生活環境評価演習3」では、生理・心理評価法を学び、身の回りの環境の測定・評価を行い、人への環境影響について考えていきます。
このように測定・分析・評価の一連を経験することで、その環境にいる人たちがどう感じるかを体験し、それを定量的な観点から改善につなげていくことを学ぶことは、卒業後に住環境の管理者として働くことも視野に入れているからなのです。