火星への旅は片道9ケ月である。帰還のために、火星と地球の位置が具合良くなるまで、約7ケ月間待つ必要がある。さらに帰還に9ケ月が必要である。
あらかじめ無人ロケットで火星へ食料と水を送っておくから、行きの分だけ持ってゆけばよい。一人乗りの宇宙船で行くことにしよう。普通の宇宙飛行士は一日に0.9kgの水と2kgの食料を必要とする。この食料には水分が含まれているので、毎日1.6kgの尿を排出する。
ロシアは宇宙長期滞在技術No.1の国である。尿を飲料水に変えて何度も使うことは昔からやっている。この技術を使えば、水の心配はほとんどない。ただし、9ヶ月間、風呂もシャワーもない。いえいえ、尿をろ過すればシャワーに使えるだろう。糞便は毎日0.2kg出るが、再生の方法はない。
一日2kgの食料、9ケ月では540kgが必要である。容器の重さを加えると約0.6トンである。世界記録を目指す宇宙飛行士にはプラスチック袋入りの保存食料で1年や2年間平気な人がいるかも知れない。しかし、それは安全な地上での話であって、何が起こるか分からない、不安な往復25ケ月をそんな食料で耐えることができるのだろうか。
日本最年長の宇宙飛行士を目指す私であるがとても自信がない。粗末な食卓ほど、一緒に食べる仲間が欲しいものだ。これは旨いとか、まずいとか言いながらの食事ならば、保存食だけで25ケ月我慢できるかも知れない。
昨年、有人飛行に成功した中国はいつかアメリカを追い抜くことを考えている。アメリカが3人乗り宇宙船の開発で苦労している間に、中国は一人乗りで火星一番乗りを果たすかも知れない。彼らは東洋医学と漢方で長期宇宙滞在は平気といっているのだから。
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