大同大学

『月刊なごや』2004年2月号より

私が注目している人物はNASA（アメリカ航空宇宙局）のS.オキーフ長官だ。彼は2001年12月長官に就任した。アメリカ大統領にとって頭痛の種はNASAが余りにも金がかかることである。特にスペースシャトルは1回の飛行に500億円以上を必要とし、NASA予算を圧迫してきた。
ブッシュ大統領は当時の財政管理局副局長オキーフ氏をNASA長官に指名した。誰の目から見ても、オキーフ氏はNASAの財政を締め上げる悪役に見えた。彼は1992年に現G.W.ブッシュ大統領の父親である元G.ブッシュ大統領の秘書官を務めた人である。その前は国防総省の財政調整官であった。
彼は頭髪も髭もほとんど真っ白、風貌から老練な官僚の印象を受ける。2003年2月にスペースシャトル・コロンビア号の分解事故が発生した。昨年夏には「NASAは組織文化を変えない限り、事故をなくすることはできない」との事故調査委員会報告書が発表された。オキーフ氏はますます張り切ってNASAのリストラに取り組む冷酷な長官に見えた。 2004年1月3日、NASAは無人探査車の火星着陸に成功した。探査機を管制しているのは、カリフォルニア州にあるNASAのJPL（ジェット推進研究所）だ。オキーフ局長は探査車着陸前日からJPLの管制室に入り、管制官と一緒に着陸信号を待っていた。成功の瞬間の写真を見ると長官は興奮し、歓喜の様子であった。とても演技とは思えない。
改めて彼の履歴を調べて驚いた。先代のブッシュ大統領の秘書官になったのが37歳、NASA長官就任が46歳、現在49歳である。私の推定年令は15歳以上間違っていたのだ。今、彼は心からNASAを愛し始めたように見える。もしかしたら、世界の宇宙開発にとって素晴らしい長官になるかも知れないと期待するのであった。

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