大同大学

『月刊なごや』2003年11月号より

10月16日、中国人宇宙飛行士を乗せた回収カプセルがモンゴル自治区に帰還した。中国の技術によってなされた偉業である。人を乗せるロケットを有人ロケットと呼んでいる。自前の有人ロケットで飛行士を打上げたのは旧ソ連、アメリカに次いで中国が3番目である。ソ連、アメリカに遅れること40年以上の歳月が経ったとはいえ、凄いことに間違いない。
昨年、秋に中国の敦煌（とんこう）で中国、ドイツ、日本の3ヶ国による宇宙の無重力利用の国際会議が開かれた。すでに中国は何度も有人ロケットの無人試験飛行を行っていた。
最終日のパーティで私は「中国が宇宙飛行に成功したら、アメリカが真剣になり、遅れている国際宇宙ステーションの建設が進むので、中国の有人飛行は大歓迎であり、予定通り来年秋に実現することを祈る」と挨拶したら、同席のドイツ人たちも相槌を打ってくれた。
実は世界で第3番目に自力で宇宙飛行士を上げる国になることに情熱を燃やしてきたのがフランスである。フランスは小型のスペースシャトルをロケットの先端に取り付けて打上げることを考えていた。そのシャトルの名前はHERMES（エルメス）である。高級ブランドの名前と同じであったので、一番望んでいたはHERMES社であったかも知れない。 10年前にフランスは資金難で有人宇宙飛行計画を中止した。こんどの中国成功で一番悔しがっているのはフランスであろう。実はもっと悔しがっているのは、ほかならぬ私である。昨年、敦煌で中国の宇宙飛行を願っていると演説しながら、内心、日本がやるべき仕事であると考え続けてきたからである。
悔しさ一杯の気持ちで言おう。中国の成功おめでとう！！

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