新型人工衛星USERS(ユーザース)が約6ヶ月ぶりに帰ってきた。帰還地は太平洋上であった。
USERSは昨年9月、宇宙開発事業団のH-2Aロケット3号機によって打上げられた。地球を周回するUSERSで新材料製造実験が行われた。衛星本体はそのまま宇宙に留まり、電気炉を搭載した回収カプセルが本体から切り離され、地球を一周して5月30日に帰還した。
衛星本体には電源や通信用の共通機器が搭載されている。別の新しいカプセルを無人で本体にドッキングさせ、実験が終わったカプセルだけを回収することができる。
現在、我が国で宇宙開発を行っているのは宇宙開発事業団や宇宙科学研究所ばかりではない。経済産業省も独自の人工衛星を開発している。実際にこの衛星の製作と運用を行っているのは経済産業省系の無人宇宙実験システム研究開発機構(USEF)という財団法人である。
6年前、当時の通産省が市販の民生部品を利用して、低価格の人工衛星を開発したいと宇宙開発委員会に申し出た時、科学技術庁が反対して、大モメになったことがある。私は委員会で通産省と科学技術庁の激しい意見のやりとりに唖然としたことがある。それは正に役所間の縄張り争いであり、そんなに激しいものとは思ってもいなかった。
結局、通産省の衛星は共通電源や通信設備の開発に限るとの条件付きで決着した。あれから6年、着々と開発が進み、完成した人工衛星は科学技術庁系の宇宙開発事業団のロケットで打上げられたのだから皮肉なものである。再使用可能な衛星本体を宇宙に残して、実験カプセルだけが帰ってくる世界最初のシステムが完成した。もう、宇宙開発の縄張り争いをしている時代でなくなったことを象徴するUSERSの帰還成功である。
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