3月に野口聡一宇宙飛行士がスペースシャトルで飛行する。1965年横浜生まれの38歳である。彼が宇宙開発事業団(NASDA)の宇宙飛行士に選ばれたのは1996年であった。
1999年春にヒューストンのNASA(アメリカ航空宇宙局)ジョンソン宇宙センターを訪問した時、案内してくれたのが野口さんであった。頭髪を短く刈り込んで、アメリカ軍パイロットの風貌に、その3年前に選ばれた時の印象とずいぶん変わったと感じた。
久しぶりに会った野口さんはまるでNASA飛行士そのものであった。狭いスペースシャトル・シミュレータの操縦席に長身を巧みに滑り込ませて、操縦の説明をしてくれた。てきぱきとした説明振りに、今までの日本人飛行士と違った印象を受けた。宇宙飛行を当たり前のこととして、淡々と任務をこなす新しい世代の宇宙飛行士の誕生を感じた。
野口さんはコンピュータが得意のプロのエンジニアである。彼の飛行は、3月上旬の予定である。イタリア製の物資輸送用コンテナをスペースシャトル貨物室から取り出し、宇宙ステーションに取り付けるため、宇宙服を着て外側から作業を行う。しかも3回も船外活動を行う。
今まで船外活動を行った日本人宇宙飛行士は土井隆雄さん一人である。宇宙服はとてもごわごわしたもので、一人で着たり、脱いだりすることができない。野口さんはNASA訓練センターの水槽のなかで、浮力をつけた宇宙服をきて、何度も模擬訓練を繰り返している。
飛行士に選ばれてから、7年弱、体調を維持するだけでも大変だったと思う。待ちに待ったフライトの成功を祈る。
追記 野口さんは2003年3月に飛行する予定であったが、2月1日のコロンビア号空中分解事故によって、2年以上計画が延びる結果になった。
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