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2月4日午前11時45分、宇宙開発事業団（NASDA）の大型ロケット2号機（H-2A 2）が種子島射場から打上げられた。ロケット本体は何の問題もなく、打上げは成功に終わるはずであった。30分後に信号が送られた。しかし、切り離されたはずの宇宙科学研究所の小型衛星ダッシュ（DASH）からの信号が受信できないことから、関係者は真っ青になっていた。
打上げ46分後に大型試験衛星MDSが放出された。その後MDSは順調に飛行を続けており、この衛星の担当者達はうれしそうである。
DASHは縦、横、高さが70、54、99cm、重量89kgと1人でやっと持上げられる大きさだ。小型衛星は大型衛星の打上げに便乗してその隙間に乗せてもらうので、ピギーバック（おんぶ）衛星とも呼ばれている。上手く行けば打上げから4日後に大気圏に突入させて西アフリカのサハラ砂漠にパラシュートで降下させる予定のものであった。
打上げ30分後にDASHの飛び出し許可信号がロケット側から送られた。それを受けたDASHは直ちに内蔵コンピュータの信号によって固定台から飛び出す予定であった。ところが、実際にはこのコンピュータを働かせる許可信号が届いていなかったのである。たしかにロケット側には信号を送ったという証拠が残っているが、DASH側には受け取ったという証拠は見つかっていない。
結局、DASHは土台ごとロケットから切り離されて、廃棄された。内蔵コンピュータの信号はロケット経由でしか出せない仕組みなので、地上からは指を加えて見ているしかなかった。
どうして、送った信号が到着しなかったか。ロケット担当のNASDAとDASH担当の宇宙科学研究所は2003年に統合されて一つの組織になる。一緒になることを嫌がっている現場の雰囲気を、DASHが感じて、いやいやしたのであろうか。ミステリーでもある。
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