NASA長官であったD.S.ゴールディンさんが昨年11月17日に辞任した。彼が長官に任命されたのは1992年4月1日のことであるから、9年4ヶ月務めたことになる。もちろん、NASA長官として最長記録である。
NASA長官は大統領が変わると変わるのが常識だ。ゴールディンさんを任命した大統領は現在のG.W.ブッシュ大統領の父親のG.ブッシュさんだ。
1993年に就任した民主党員のクリントン大統領は、大方の予想を裏切って共和党大統領が選んだNASA長官を変えなかった。クリントン大統領時代のアメリカは未曾有の好景気に沸いた黄金の時代であった。それでもNASAは膨張する予算を確保するために、いつも議会や国民に向かって頭の下げ通しであった。
クリントン大統領の就任間もなく、上院では巨額な経費を必要とする宇宙ステーション建設の中止が提案され、一票差で助かったことがあった。この時、クリントン大統領はロシアを宇宙ステーション建設の仲間に引き込むことによって経費を低くすることができると議会を説得した。実はこのことを仕掛けたのはゴールディン長官であった。
その後、完成までの宇宙ステーションの建設見積額はアメリカ負担分だけで、200億ドルから300億ドルへと膨れあがっていった。緊縮財政による減税を公約にして当選したブッシュ大統領はゴールディン長官の責任を厳しく追求し、彼は辞任に追い込まれた。
彼は辞任の記者会見で「宇宙ステーション計画は100億ドル(約1兆3,500億円)以上の予算オーバーとなったが、NASAは10年の間にはるかにそれ以上の節約を行ったので、合計ではマイナスにはならない。」と反論した。しかし、大統領は認めなかった。
無人ローバーによる火星探査とハッブル宇宙望遠鏡の成功が彼にとって最も輝かしい想い出として残ることであろう。
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