大同大学

『月刊なごや』2002年1月号より

元来、宇宙開発は予定通りに行かないものだ。予想できなかった問題が生ずるたびに経費が膨らむので、いつもNASAは金食い虫だと財政当局からは眼の敵にされている。国際宇宙ステーション建設も例外ではない。
議会から承認されたNASA担当分の宇宙ステーション建設予算は200億ドル（2兆4,000億円）であったが、昨年秋の試算では、300億ドル（3兆6,000億円）に膨れあがっている。
ブッシュ大統領は宇宙の平和利用よりも軍事利用を優先する方針を掲げて、国際宇宙ステーションの建設費用の増額を認めないことを決めた。それだけではない。
「今後2年間、NASAのお金の使い方を厳しく監視し、計画通りの予算で建設が進むならば、その先の国際宇宙ステーションの建設も認めるが、オーバーするようならば認めない」との決定を行った。認めると云っても、増額なしの元の予算額であるから、建設が続行されても、ステーションの規模は縮小せざるを得ない。
私は長い間、宇宙ステーション利用計画の立案に携わってきた1人である。完成した宇宙ステーションを実際に自分の眼で確かめることを夢見ている。何事も実際に見ると聞くでは違うものだ。実験装置の動き具合もこの眼で見たい。
ステーションの完成時期は、2009年とされている。その時、私は69歳になる。医学検査で多少の問題が見つかっても、私はシルバーパスを持っているのだから、大目に見てもらうつもりだった。
しかし、NASAの新しいスケジュールでは、上手く行っても、日本人飛行士がステーションで実験を行えるのは2010年以降になりそうだ。それでは私は70歳を超えてしまう。それまで、酒を慎んで体調を維持することは、容易なことではない。

建設が難航する国際宇宙ステーション（2005年現在、スペースシャトル・コロンビア号の空中分解事故によって建設が中断している）（NASA提供）

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