大同大学

『月刊なごや』2001年8月号より

大型ロケットH-2A　1号機の打上げが8月25日に決まった。射場は宇宙開発事業団の種子島宇宙センターである。ロケット打上げにおいて延期は常識であり、多少の遅れがあっても慌てる必要はない。
初の国産大型ロケットH-2が1994年に打上げ成功して以来、続けて5回成功したが、98年と99年に続けて失敗したため、日本の宇宙技術が地に落ちたごとく、厳しい批判を浴びている。
今度のロケットは失敗したH-2の改良型である。構造をシンプルにして、製造コストを下げ、故障の原因をできるだけ少なくしたものである。同じ性能で比べた場合、H-2の値段はヨーロッパ宇宙機関が開発したアリアンロケットの約2倍であり、人口衛星打上げビジネスでは太刀打ちできない。
半額ロケットH-2Aの開発を進めていた矢先の失敗であった。元来、日本のロケットは失敗の経験が少なく、手加減が分からないため、名人技をもつ職人が手塩にかけて造った芸術品のようなものであった。価格を下げるためには、芸術品では駄目で手を抜いて良いところは徹底的に簡略化する必要がある。実は、この加減は多くの失敗をしなければわからないところでもある。
ロケット開発の王道は沢山打上げて、沢山の失敗をすること。ただし、同じ失敗は2度と繰り返さないこと。
8月25日の打上げ前に関係者はコチコチに緊張している。絶対に失敗しない意気込みは大切であるが、それでは神経がもたない。今はリラックスすることが大切な時期である。受験と同じである。もう一度、失敗したらまた頑張れば良いではないか。そのようにして、フランスは衛星打上げビジネス世界一の座を獲得したのだ。

宇宙開発事業団の新型ロケットH-2Aの打上げ想像図、H-2の半額で打上げることが目標だ（NASDA提供）

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