アメリカで最も尊敬する人物は?と聞いたらジョン・グレンと答える人が多い。彼は77歳でスペースシャトルに搭乗した世界最長老の宇宙飛行士である。
グレンさんはアメリカ人最初の地球周回を行った宇宙飛行士でもある。アトラスロケットで打上げられた当時40歳の彼は一人乗りのカプセルで4時間56分の宇宙飛行をした。
スペースシャトルの運航が始まると、彼の血は騒ぎ、シャトルに乗りたいとの気持ちは高まる一方であった。
最初の宇宙飛行士であることに加えて清廉潔白な上院議員として、議会でも彼の扱いは別格であった。彼が部屋に入って来る時は全員が立ち上がって敬意を表した。大統領が立ち上がる唯一の人であった。
どうしてももう一度宇宙飛行をしたい。NASAに働きかけてみたが、さすがの彼も高齢を理由に丁寧に断わられた。
宇宙では骨からカルシウムが抜けやすく、骨が弱くなることが知られている。カルシウムが抜けてもろくなる状態が骨粗しょう症である。この対策は高齢化社会で重要な課題である。
高齢者の骨からカルシウムが抜ける研究は骨粗しょう症の研究に役に立つはずである。自分を実験材料にしてほしいと、クリントン大統領に何度も手紙を書いた。遂に彼のスペースシャトル搭乗が決定された。
彼の飛行は1998年に行われた。医師の向井千秋さんがチームメートであった。千秋さんはいつも彼の健康状態に気を配ったとのことであるが、彼は老人扱いされることが嫌いであった。
飛行後の報告会で彼と話をすることができた。私は「日本人最高齢の飛行士を目指す」といったら、片目をつぶって「グット・ラック」としっかりと手を握ってくれた。その手の力強さに驚かされた。
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