3回も続けて大凶を引いたアメリカの宇宙飛行士に弱ったことがある。
1984年3月、宇宙実験学会の設立記念講演会を東京で開催した。その目玉として、NASA(アメリカ航空宇宙局)の女性飛行士ボニー・ダンバーさんを招待した。
NASAの飛行士招待はまず、本人の内諾をとることから始まる。当時彼女は35歳の独身であった。東京に行っても良いという返事が直ぐきた。
NASA本部からは、ビジネスクラスの往復航空運賃と滞在費の概算として、約100万円を指定の口座に振り込むよう指示があった。謝金は不要で、精算の後、余った分は返すとあった。
ある財団の補助金をあてにしての記念講演会であり、学会には金がなかった。仕方なく、後払いにしてほしいと手紙を書いたところお許しを頂き、彼女の来日となった。当時の中曽根科学技術庁長官を表敬訪問した。
中曽根さんは彼女の誕生日が3月3日であることを知り、みやげにお雛(ひな)さまを用意せよとのご下命があった。その時は3月下旬であり、もう店にはお雛(ひな)さまはなかった。無理をいって蔵から出してもらった。
浅草寺に連れて行って、おみくじを引いた。1回目大凶、「何と書いてあるか」と聞かれて、「もう一度、引く」と嘘を言った。何と2度目も大凶、「さらにもう一度」と説明した。3度目も大凶、同行した信心深い家内は青くなった。
「お守りが必要」と説明して、銀杏製のお守りをバッグに付けてあげた。彼女は1985年10月にスペースシャトルで1週間の飛行を果たした。無事帰還のニュースを聞いて、ほっとした。
後で浅草寺に聞いたら、大凶の割合は5%とのことであった。3回連続大凶の確率は約千分の1である。
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