大同大学

『月刊なごや』2001年1月号より

女性の宇宙滞在記録保持者、シャノン・ルシドさんが日本訪問の時、エスコートする機会があった。どんなにたくましい女性かと想像していたら、なんと笑顔の素敵な2人の子供の母親であった。彼女はNASA（米国航空宇宙局）の飛行士として、ロシアのミールに188日滞在した。
長期滞在にかけては、ロシアが先輩だ。ロシアの宇宙ステーション・ミールにアメリカ人飛行士が乗り込んで、長期滞在する試みが1995年から98年にかけて行われた。ミールとスペースシャトルがドッキングすることから、シャトル−ミール計画とよばれている。
3年の間に合計7人のアメリカ人がミールに滞在した。アメリカ人とロシア人宇宙飛行士の関係がうまくゆかず、トラブル続きであった。ミールの中ではロシア語が公用語であり、2人のロシア人と一人のアメリカ人の組み合わせでは、期間が長くなると人間関係がとても難しい。ノイローゼになり憔悴（しょうすい）して帰還した飛行士もいる。
その点、ルシドさんは大したものだ。狭い宇宙船の中で、2人のロシア人男性と半年を過ごすなんて、日本人の常識では考えられない。彼女は仕事をきちんと成し遂げたばかりでなく、2人のロシア人と素晴らしい人間関係を築いた。
彼女に宇宙で長期間耐える精神力の源は何かと尋ねたところ、「主人が家事をすべてやってくれるし、子供の面倒も安心して任せられるから、宇宙飛行士として全力投球ができた。それに2人のロシア人飛行士は素晴らしい人たちであった」と答えてくれた。彼女の世界最長記録には、理解ある陰の力があったからと納得した。

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