質問 16 (5..2006)
「水は酸素をふくむ」と「空気は酸素をふくむ」の「酸素」の厳密な意味はちがう、ということですが、よくわかりませんでした。
回答
「酸素」は元素名である、と同時に酸素の単体としての物質名でもあるのです。複数の意味で使われます。このことは「酸素」だけでなく他の元素でも全く同じです。化学に慣れていないひとにはたいへんわかりにくく、化学嫌いを誘発・増長しそうですね。元素の名前は、化学あるいは理工系・医薬生物系分野、そして日常生活においても、たくさん出てきます。使い方は次の3つに分類してよいと思います。
○ 元素の概念として使っている。(E)
○ 元素の単体としての物質名として使っている。(M)
○ 本当はその元素を含む化合物(群)を意味しているのだが、元素名を使ってしまう。(C)
(C)は、(E)のなかに含まれるとしてもよいかも知れません。
質問の最初の「酸素」は(E)として、2番目は(M)として使われています。
他の具体例を、クイズ形式で考えてみましょう。
次の元素名「酸素」の使い方は、元素の概念、単体物質名、化合物(群)のどれと判断しますか?
(1) 二酸化炭素は炭素と酸素からできている。
(2) 水を電気分解すると、水素と酸素が発生する。
(3) 空気の主成分は窒素と酸素である。
(4) オゾンは酸素の単体である。
答は、元素の概念(E)が(1)、(4)であり、単体物質名(M)が(2)、(3)で、ここで「酸素」はO2という化学式で示される単体のことです。
では、次の下線の元素名については、どうでしょう。
(5) マーガレット・サッチャーは鉄の女と呼ばれた。 (M)
(6) 胃の検診で、バリウムを飲んだ。(C)
(7) 鉛色の空。(M)
(8) 夜明けの金星 消えゆく空はコバルト。(?、C)
元英国首相「鉄の女」の鉄は強さの比喩としての鉄金属(単体)であると考えられるから、答はM。
胃の検診で飲むのは硫酸バリウム(BaSO4)であるので、Cが正解。
鉛金属の色のことだから、M。
最後の(8)は、荒井(松任谷)由美の「コバルト・アワー」(1975)の詩の一節。「金星」、これは難しい・・Venusを金星と和訳したのは何故・・・わかりません。後ろの「コバルト」はコバルト・ブルーのことです。ある種のコバルト化合物が示す美しく深く澄んだ青色のことだから、正解はCとしてよいでしょう。