Q and  A 

質問  11   (6.2005)

亜鉛、カドミウム、水銀は、遷移元素であるとしている本を見つけました。典型元素とするのが大勢のように思いますが、どうなのでしょうか。また“遷移”と“典型”の名前の意味は、どういうことからついたのでしょうか?

回答

周期表で縦にならんでいる亜鉛、カドミウム、水銀は仲間で、第12族元素です(亜鉛族元素ともいう)。 第1、2族および第12〜18族は典型元素、第3〜11族は遷移元素とされています。したがって、亜鉛族元素は典型元素としてよいです。亜鉛族は電子配置的に分類したときdブロック元素の仲間ですので、このときは遷移元素のなかに入れる考え方も妥当ではないかと気持ちになります。実際、遷移元素として分類している書籍も少なからずあります。
 遷移元素の現代的定義は「不完全に電子が満たされたd軌道をもつ元素、またはそのような陽イオンを生じる元素」です。亜鉛原子Znの電子配置は1s22s2p3s23p4s3d10です。亜鉛の陽イオンはZn2+で、1s22s2p3s23p3d10です。原子も陽イオンも3d10ですので、「不完全に満たされたd軌道」をもちません。それに対して1つ原子番号が小さいお隣の銅は、原子Cuの電子配置で1s22s2p3s23p4s13d10ですが、陽イオンCu2+では1s22s2p3s23p3d9で「不完全に満たされたd軌道」をもち、遷移元素の定義に当てはまります。
 「遷移」は、移り渡ることという意味です。何が「遷移」するのだろう?というのが2つ目の質問のポイントですね。これは周期表の発展の歴史に、その語源をさかのぼることができます。メンデレーエフはT族からZ族(現在の1〜18族とは別物であることに注意)の枠のある周期表をとりあえず作成していました。そこに[族を加えたようです。[族は現在の8〜10族(鉄、コバルト、ニッケル族)です。Z族から次の周期のT族へ移り渡るあいだに出てきた元素であるので、[族を遷移元素と呼んだのが始まりのようです。それ以外のものはメンデレーエフ的には周期表の普通枠に収まっているということで「典型元素」という名前でよいということでしょう。

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