Q and  A   5

質問  5 (11. 2004)

(1) 酸性雨はpHの値でどれくらいのものをいうのですか。
(2) 「酸性雨」があることはわかりましたが、「塩基性雨(アルカリ性雨)」もあるのでしょうか

回答
pH5.6以下のものを酸性雨とするのが一般的です。もちろん、pH7より小さい雨水は、化学的には酸性です。それなのに、どうして5.6というボーダーがあるのでしょうか。
それは、雨は自然の状態でも(人為的な汚染が全くない場合でも)、pH 5.6程度に、少し酸性になっているからです。空気中に存在する二酸化炭素CO2が原因です。二酸化炭素が水に溶けると次の反応で、雨水中では、[H+] > [OH]となり酸性を示します。
CO+ H2O → H2CO3 → H+ +HCO3
H2CO3 は炭酸という弱酸です。空気中のCO2の濃度は0.035%(体積百分率)であることと、炭酸の上の反応の解離定数の値から、pH 5.6が計算で求められます。この計算の詳細については、西村雅吉先生が大変わかりやすく記述しておられますので参照してください[1]。ということで、5.6以下のpHの雨には人為的な汚染による酸性物質が含まれているわけで、それを「酸性雨」と呼ぶのが普通です。
 人為的な汚染によって、雨水が塩基性になることはないのか、これが第2の質問ですね。大気に放出され物質で、雨水と反応して溶け込みpHを変化させるものとしては、SO2、NO、NOなどの硫黄酸化物(SOX :ソックス)と窒素酸化物(NOx:ノックス)がよく知られています。ソックス、ノックスは化石燃料(石油、石炭)中の硫黄分、窒素分の燃焼によって生成し、O2、H2Oと反応して、最終的に硫酸H2SO4、硝酸HNO3となります。これらは強酸であり、pHをさげる方向に働き、酸性雨の主役です。ノックスは自動車などのエンジン内でN2とO2の高温反応でも生じます。
pHの値を大きくする放出物質の有力なものはアンモニアNHです。
NH3 + H2O → NH4+ + OH
アンモニアは弱塩基ですが、畑、家畜の糞尿が主たる発生源とされます。アンモニアだけが大量に発生するような状況があるとすれば、塩基性雨の降下する可能性はないとは言えないでしょう。しかし、酸性物質の放出・存在の方が相対的に多いので、pHが7より大きく(塩基性に)なることはないようです。

[1] 西村雅吉著「環境化学」 pp.153-154(裳華房、1991)
 

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