Q and  A

質問 4  (6.2002)

電子配置の閉殻構造は安定ということで、Naは電子が1個とれて、1s22s22p6の閉殻構造のNa+になりやすい。Mgは2個の電子がとれて閉殻構造のMg2+になる。Clでは、逆に電子を1個受け取って、1s22s22p63s23p6の閉殻構造のCl-となるということでした。鉄のイオンとしてFe2+とFe3+の二つがあるのですが、電子配置の閉殻構造の安定性から、どのように説明されるのですか?

回答
鉄の原子番号は26で、Fe原子の26個の電子の電子配置は1s22s22p63s23p64s23d6であることは講義でお話しをしました。Fe2+の電子配置は4s電子の2つの電子がとれて1s22s22p63s23p63d6となります。Fe3+の場合は、Fe2+の電子配置からさらに3d電子が1個とれて、1s22s22p63s23p5となります。どうして4s電子が先にとれるのだろう。3d軌道のエネルギーが高いのだから、よりとれやすいのは3d電子のはずではないか。という疑問が浮かび上がってきます。これはクロム(原子番号24)と銅(原子番号29)の原子の電子配置(Cr;1s22s22p63s23p64s13d5、Cu;1s22s22p63s23p64s13d10)のところで出て来た不規則性に関係があります。4s軌道と3d軌道の順番は原則的には4s<3dですが、そのエネルギー差は小さいのです。3d電子の配置による安定さによって、むしろ4s軌道のほうがエネルギー的に高く(不安定に)なってしまうことがあります。Fe2+とFe3+を比較しますと、Fe3+のほうが安定です。Fe2+は放っておくとFe3+に変化しますが、その逆はありません。これはFe3+の電子配置が3dになっている、つまり5つの3d軌道に1個ずつ5個の電子が入っている状態はここちよさ(エネルギー的安定)をもたらすからです。

基礎化学の講義ですので、できるだけ単純化して説明をしました。でも、実際はいろいろ複雑な面倒なこと(不規則的、例外的なこと)も起こっているわけです。
 

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