質問 2 (5.2002)
炭素12(12C)原子の質量(W)は、6個の陽子、6個の中性子、6個の電子の合計の質量(P)よりわずかだけれども小さい。その差額分(Δm=P-W)は原子核の結合エネルギー(E
= Δm・c2)に変化して蓄えられている。原子力エネルギーは、主としてウランの原子核結合エネルギーを原子核分裂により取り出して利用しているとのことでした。
太陽のエネルギーは水素の原子核の反応から放出されるということを聞いたことがあります。天然の水素原子のほとんどは1Hです。1Hの原子核は陽子1個です。原子核の結合エネルギーはないのじゃないですか。どうなっているのでしょう?
回答
太陽では核融合反応が起こっています。水素がその燃料になっています。何段階かの核融合反応があるとされていますが、まとめると次の核融合反応になります[1]。
1H+1H+1H+1H → 4He
1Hと4Heの質量は、それぞれ、1.6736
x 10-27kg, 6.6466 x 10-27kgです。これらの値から上の反応での質量変化(Δm)を計算してみてください。4.8
x10-29kgの質量の減少(欠損)があることがわかります。E = Δm・c2(c:光速度)でエネルギーを計算すると、E=4.3
x10-12Jです。これは4個の水素が1個のヘリウムとなった場合です。1gの水素(1H)が核融合したとすれば、6.5
x1011Jです。どれくらい大きいエネルギーかを実感するためには演習17(プリント9ページ)のように、100馬力の自動車がこのエネルギーで使用できる時間を計算してみるとよいでしょう。
核融合でも核分裂でも、質量欠損のエネルギーを使っているということです。
参考文献
[1].古川路明: 「放射化学」p.169,
現代科学講座15, 朝倉書店 (1994)
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