繰り返し力を受ける変断面柱の弾塑性安定に関する研究 <1991-1998>Home

 この研究は,橋脚の柱部材や長大橋のタワーで用いられる鋼変断面構造の柱の弾塑性履歴性状を実験的に調べたものです.数値解析で見出した変断面柱の不安定な現象を実験で確認しています.
 定鉛直荷重下で繰り返し水平力を受ける鋼変断面片持ち柱の弾塑性解析と実験を行い,変断面性に起因した柱の履歴挙動の基本的特性を調べています.実験結果から,この種の柱は複数の塑性崩壊モードを有することを指摘し,柱基部および断面変化点付近の残留曲率に起因して,半サイクル毎に相異なる崩壊モードを呈する場合があることがわかりました.その特徴として,履歴ループの移動,構成断面の吸収エネルギー分担率の変動等があげられます.また,繰り返し力下で崩壊モードが移行する遷移領域が存在することも示しています.
JPEG PICTURES:

●実験供試体と実験方法

●以下に示す写真は,実験で確認できた変断面柱の崩壊モードの変動を示しています.


実験前

STEP-1:柱基部断面Sec.1の
下端で塑性変形が発生

STEP-2:上部断面の下端で
塑性変形が発生

STEP-3:柱基部断面Sec.1
の下端で塑性変形

STEP-4::上部断面の下端で
塑性変形

STEP-5:柱基部断面Sec.1
の下端で塑性変形
 このように柱の水平方向に正負に繰り返して変位を与えると,変断面柱は最終的にS字形になって崩壊します.これは,柱下端の大きな断面と断面変化した直上の小さな上部断面の塑性変形が交互に発生することに原因しています.塑性変形が交互に発生するのは,1つの断面で塑性変形すると,反対方向の載荷のときに,それが残留変形として残るためです.
 このような現象が現れるとき,柱に作用する水平荷重Hと水平変位δとの関係は,下図のようになります(数値解析結果の一部です).
Fig. Cyclic instability of column with variable cross-section

参考文献
1) 酒造敏廣: 水平地動を受ける鋼変断面片持ち柱の動的弾塑性挙動に関する研究,土木学会論文集, No.501/I-29, 1994年10月,pp.75〜84.
2) 酒造敏廣,事口壽男,西 幸二:鋼変断面片持ち柱の弾塑性履歴崩壊性状に関する基礎的実験,構造工学論文集,Vol.39A,土木学会,pp.127〜284,1993年3月.
3) Miki, T. and Nethercot, D.A.: Cyclic Instability of Columns with Variable Cross-Section due to Combination of Collapse Mechanisms, Proc. of 5th International Colloquium on Stability and Ductility of Steel Structures, Nagoya, Japan, July 1997, pp.596-576.(This paper is also presented in "Stability and Ductility of Steel Structures" edited by Usami & Itoh, pp.337-346, Elsevier Science Ltd, 1998.)


Revised 27 July 1999