正孔は半導体の話で出てくる言葉です。普通、電気が流れるのは電子が動くからと習いますね。電線など金属ではその通りです。また化学では水溶液の中にイオンというのがあって、それも電気を運ぶと教えられます。正孔も電気を運ぶものなんですが、電子でもイオンでもありません。
じゃあ何だというと、隙間なんです。もう少し正しくいうと、周りは電子が詰まっているのにそこだけ電子がないという隙間です。穴(孔)といってもいいでしょう。英語では正に hole です。電子はマイナスの電気を持っていますが、正孔はそれがない部分ですから相対的にプラスの電気を持っているように見えるわけです。そして正孔が動くと電気が流れたということになるんですね。
劇場の席が一列満員の中に空席がひとつあったとしましょう。空席の隣の人が席をひとつずらしてその空席に移動します。新たに空いた空席にまた隣の人が詰めて移動します。これを繰り返すと、空席が移動しているように見えます。空席が正孔、人が電子というわけです。
正孔が電気を運ぶ担い手となる半導体を p型半導体といいます。反対に電子が電気を運ぶのが n型半導体です。そして、p型とn型をうまく組み合わせると、増幅、スイッチング(入切)など、電気で電気の流れをコントロールすることができるようになります。コンピューターはそのような半導体素子を何億個も使った回路からできているのです。--- Y.O.
大同工業大学 情報学部 大石研究室