これは一時期大変はやった言葉で高校の教科書にまで出ていました。社会のいたる所にコンピュータがあって、コンピュータが連帯して、人間の生活を助けてくれるような環境を意味する言葉です。1989年、米ゼロックス研究所のマーク・ワイザーがコンピュータ社会の将来を語るときに使った(論文に書いたのは1991年)ユビキタス・コンピューティングという言葉が元だといわれています。
この考え方自体は SF では何十年も昔から語られていたことで、とくに新しい概念ではありません。現実社会でも坂村健氏はこれに先んじて「どこでもコンピュータ」という言葉で表現しています。かつてのアルビン・トフラーの「第3の波」にしてもそうでしたが、内容にさほどの斬新さはなくてもネーミングの良さとタイミングの良さで流行するものだと思います。
もうひとつの流行の理由として、ユビキタスという言葉の音の感じが良いということがあるのでしょう。なんとなく高尚な響きではありませんか。英語の ubiquitous はラテン語の ubque (どこにでも)から由来するもので、語感は英語的ではありません。それで、アメリカではユビキタス・コンピューティングのことは pervasive computing ということの方が多いのだそうです。 --- Y.O. ---
追記 2018.Sep.
この記事を書いてから約10年ですが、ユビキタスという言葉はすっかり死語になってしまいました。もう、ユビキタスが実現されているからでしょうか。持ち歩くスマホやタブレットはもちろん、チケットの発行や回転寿司のオーダーまでコンピューターが手伝ってくれます。そして自動車の運転の自動化も目前です。
IT用語の寿命がいかに短いかがわかります。大きく話題になった言葉ほど消えるのも早いようですね。