闘牛士のマンボ

掲載: 吹奏楽団 定期演奏会パンフレット  2002, 3

卒業した高等学校の吹奏楽部のことを思い出している。ブラスバンド部、あるいはブラバンといっていたように思う。ブラバンは1年に1、2回演奏会を行った。体育館の床のうえ、体操座りをして聴いた。十八番だったのか、それとも人気があってやむを得ずであったのか定かではないが、必ず演奏する曲があった。「闘牛士のマンボ」である。軽快なラテンのリズムは発展途上の高校生の感性をくすぐった。未だ見ぬ異国へいざなってくれる。掛け声がお気に入りでもあった。「ウッ!」とか「オッ!」とか「ア-------、ウッ」と叫ぶ。聴衆の悪ガキは、頼まれてもいないのに待ち構えて唱和する。楽しかった。壇上からみれば行儀の悪い客であったろうが、30数年もたって忘れられない音として蘇らせているものが一人でもいるとすれば、演奏者冥利につきるとはいえないか?(007)

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