トロン(TRON:The Real-time Operating system Nucleus)というのは、日本が独自に提唱・開発しているコンピューター・アーキテクチャで、CPUからOS、ネットワークまでコンピューターの利用環境全般の標準化を目指すプロジェクトです。1984年から坂村健氏を中心に始められたもので、現在でもトロン協会という社団法人によって進められています。 という話を聞いたことがある方は多いでしょう。その技術は携帯電話や自動車の組み込みコンピューターに使われているというのですが、なんだか実態が見えませんね。
非常に広い範囲の計画なので、機器組み込み用OSのITRON、通信機用OSのCTRON、ビジネス用パソコン用のOSのBTRONなどと細分されています。かりに私たちが直接触れるとしたら、BTRONだと思いますが、これですら見たことのある人はほとんどいないと思われます。
TRONの内容が悪くて使われないのでしょうか。…そんなことはありません。でも、コンピューターの市場はよいものがシェアを獲得するとは限りません。早くユーザーを獲得したものほどシェアを伸ばすという傾向があります。CPUにしてもOSにしてもそうです。
OSではWindowsがここまで普及してしまった状態で別のOSに移るというのは非常に大変なことでしょう。特定の製品が寡占状態になることは技術の進歩にとって好ましい状態とはいえません。また自由競争や公平性の観点でも問題があります。しかしユーザーの利便性を考えると必ずしも悪いとも言えないのです。
かつて、市場にワープロソフトが何種類も出ていて、互いに互換性がなかった時代がありました。互いに機能を向上させる競争があってワープロは進化しましたが、他の製品の文書が読めないことには困たものです。強いものの一人勝ちがいいのか悪いのか…、コンピューター業界の永遠のジレンマです。--- Y.O. ---