昔のプリンターは、テレタイプでも、ドットインパクトプリンターでも、インクリボンと紙を叩いて印字していました。そのため紙送りが止まってしまうと同じ行に何度も印字されて文字が重なってしまいます。でも、これを逆手にとってわざと重ねて印刷するのが重ね打ちです。たとえば delete というような取り消し線も文字の上に後から線を重ね打ちしていました。
重ね打ちをするには、改行するときに紙送りをゼロにすればいいのです。そして同じ行に重ねたい文字を印字します。ですから重ね打ちのことを「ゼロ改行」とも言います。
今では改行といえば行送りと行頭への復帰が同時に行われます。でも文字コードでは「改行」と「復帰」が別に定義されています。復帰だけして印字すれば重ね打ちになるわけですね。ただし、ディスプレイの上では紙のようにはならず下の字が消えてしまいますが。
昔は面倒なことをやっていたわけですが、そんなことでも遊びに応用するという人が必ず現れます。たとえば右の図のような重ね打ちアートがありました。文字しか印刷できないプリンターで何とか絵を印刷しようとこんなこともやったのです。明るい部分は画数の少ない文字、暗い部分は画数の多い文字、もっと暗い部分は重ね打ちというわけです。
今ではこんなことやろうとする人はいないでしょうが、もしやるとしたら逆に面倒な作業になってしまいます。重ね打ちができなくなったら、今度は様々な文字の特徴を生かてアスキーアートが生まれました。限られた道具を究極まで使う…という物好きはいつの時代でもいるものですね。--- Y.O.
大同工業大学 情報学部 大石研究室