レイテンシーとは、装置がデータを要求してから実際にデータが来るまでの時間のことです。時間がかかるという意味ではタイムラグ、ディレイ、レスポンスタイムなどという言葉と重なりますが、若干ニュアンスが違うようですね。latencyはlatentの名詞形で、latentには「潜在の」「隠れている」という意味があります。latent period は病気の潜伏期で、感染はしていても発病していない状態です。本当はあるのに見えない→遅れないでほしい、という感じでしょうか。
この言葉はコンピューター関係ではディジタルオーディオやMIDIでよく使われるようです。音を出せといわれてから本当に音が出始めるのに時間がかかることがあります。すべての音が一様に遅れるのなら気づきにくいですが、音ごとに違うとたった0.01秒差でも分かってしまいます。
そんな遅れがでるのはなぜでしょう。それはデータ処理や転送に時間がかかるからです。では機器の処理速度がもっと速くなればこれは解消されるのでしょうか。…残念ながら処理速度がいくら速くてもレイテンシーがなくならないような問題もあります。たとえば音にイフェクトをかける場合、その時点だけでなく前後の音を使って今の音を計算します。前の音は記録できますが、後の音はデータがたまるのを待つしかありません。これは未来予測ができない限りどうしても避けられない問題なのです。結果は原因より先には起こらないという当たり前のことなんですが。--- Y.O.
追記 2018.Sep.
最近のテレビ中継で、現地のレポーターとスタジオとのやりとりがぎこちないことがありませんか。通信のレイテンシーで映像や音声が遅れるからです。衛星中継だと電波が光速で伝わっても0.3秒程度の遅れがでます。さらにネット通信やデータ処理に時間がかかるので非常に大きなレイテンシーを生じてしまいます。
コンピューターでのデータ処理の時間も馬鹿になりません。地デジ放送で時報がなくなったのはデータ処理によるレイテンシーのせいです。さらに面白いのは映像と音声がずれることです。一般に音声より映像のデータの方が処理に時間がかかるため映像が遅れてしまうのです。
いっこく堂がやっていた「あれ,声が…遅れて…聞こえて…」と反対のことが起こってしまうのですね。
大同工業大学 情報学部 大石研究室