<吊橋部材の説明>


アンカレイジ


  吊橋のケーブル両端を固定する橋台。ケーブルの力を引張材に固定し、重さ(コンクリートブロック)で安定させ、力を地盤に伝達させる構造である。ちなみに、小スパンの吊橋の事故の原因の大部分はアンカレッジとケーブルとの連結不良に基づくものが多い。


(主)ケーブル<ハンガー>


 ケーブルは、吊橋の主構造・耐荷力の根源であり、ハンガーロープ・ケーブルバンド・主ケーブルからなる。
 ハンガーは、吊り構造の重さや、自動車荷重を主ケーブルに伝達するためのロープで、割合に細かな間隔で、すだれのように配置されている。
 ケーブルバンドは、多数のストランド(小縄)からなる主ケーブルがバラバラにならず、円形断面を保つように押さえつけ、また、ハンガーを通ってきた吊り構造からの荷重を、傾斜をもつ主ケーブルに伝える役目がある。
 橋の全長にわたって続く主ケーブルは、吊橋の生命である。ケーブルは見た目には太いが、一本の丸太のような鋼材でできているわけではない。何十、何百かの平行なストランドで形成され、また一本のストランドは、直径5mm程度のワイヤーを何百本か平行に束ねて作られている。
 このようなケーブルは、自身の重さを含め、自動車や吊り構造の重さを、主塔の塔頂とアンカレイジに伝える。伝えられる力の方向は、塔頂では鉛直下向き、アンカレイジでは主に水平方向である。広々とした水面上空に、正確にはカテナリーと呼ばれる曲線、近似的には放物線を描く主ケーブルは、吊橋の優美さでもある。


サグ


 吊橋のケーブルの、塔頂から最下点までの垂れ下がり量。サグが大きければケーブル張力が減り、小さくなれば増える。
 ちなみに、このサグをスパンで割った値をサグ比と呼び、吊橋設計上の大切なパラメーターである。現代の長大スパン吊橋では、これが10分の1前後のところで、上部工全体の設計が一番経済的になる。例としてテニスのネットを支えるポストの間隔は約11m、高さは1.1m。したがってサグ比10分の1とは、ネットを吊るワイヤーが中央でコート面に触れる程度の、いわばゆるい張り方である。しかし、本物の吊橋の場合にはケーブルや吊り構造が重いため、これで十分なケーブル張力が発生する。


サドル


 ケーブルを塔頂部でおさえる鞍状の金具で、ケーブルの向きを変える働きももっている。



 (主)塔は、主ケーブルが所定の曲線を描けるように、これを支える。ケーブル・吊り構造や自動車などの重さに抵抗して、空に向かって突っ張っている。したがって、塔は柱である。ただし、活荷重の載り方や、温度変化によっては、ケーブルが力の釣り合いを得るために動くので、塔頂もこれに引きずられて、前後に1m程度移動する。この塔頂変位に追従できるように、塔はしなやかでもなければならない。


バックステー


 塔頂からアンカレイジまでに架かっているケーブルのこと。


補剛桁(トラス)


 橋全体(特に吊橋、斜張橋などで)の剛性・耐風安定性を増すために桁を用いる場合の呼び方。普通の桁橋などの桁は主桁といい、補剛桁とは呼ばない。
 補剛桁は床を支え、ある部分に載った活荷重を広い範囲に分散させてケーブルに伝え、吊橋に局部的な変形が生じるのを防ぐ。変形への抵抗能力を「剛性」と呼ぶが、橋全体の剛性を補う目的で桁が設けられるゆえ、補剛桁という。剛性は、引張りに頼っているがゆえに変形が大きくなりがちな吊橋において、変形を有害でない程度に制限し、風による振動を防いで耐風安定性を確保するためにも必要である。

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