濃尾地震の震源地 根尾谷断層の履歴書

地質試掘で初めて 通産省調査所

 わが国最大級の内陸性地震・濃尾地震(1891年)の震源地である岐阜県本巣郡根尾村の「根尾谷断層」を、通産省工業技術院地質調査所が試掘し、17日までに濃尾地震から1万年前にさかのぼって活断磨の動きが分かる溝を初めて見つけた。同断層の地震が周期的に起きていることは知られているが詳しい年代を測れるデータはなかった。断層の活動歴をつかむとともに地震予知にもつながる資料となりそうだ。

2000年に1度の揺れ

1万年の動き判明

 調査地は同村中心部かち北西約4キロの同村門脇にある丘陵で、マグニチュード(M)8.0の濃尾地震で地表が水平方向に6mずれた場所。今月8日から始まった濃尾地震以前の地震を探る調査で見つかった。長さ30m、幅2m、深さ2−2.5mの試掘溝を掘ったところ、古い順に十数段の地層が現れ、その中に過去の地震でずれ落ちた地層の跡が、断層面を中心にV字形で数回分、確認された。同地質調査所の栗田泰男主任研究官によると、地中の有機物の分析から、最も古い部位で約1万年前のものと分かった。地層の中には、6千年前に九州地方で噴火した火山灰も合まれていた。同様の地層は阪神大震災を起こした野島断層(淡路島)などで発見されている。
断層の活動を示す、地表がずれ落ちた跡は、不鮮明な部分もあるが「(観回数は)5,6回程度ではないか」という。単純計算で約2000年に1度の割の地震ということになる。根尾谷断層では3千−4千年に1度の割合で地震が起きていたとする調査結果がある。鈴生康弘・愛知県立大学文学部助教授(地形学)は「複数の断層が積み重なっているが一カ所で今までより短い周期のデータが得られるのなら、断層系のどこかが動く地震がその周期で起きていたと考えるべきでは」と話している。
栗田主任所員は「実際に大地震が起きた根尾谷断層で連続した1万年の活動テータが得られるとは…。4月から態勢を整えて再調査する。大地震の規則性を知る標準モデル作りの貴重な資料になる」と話している。通産省工業技術院は今後2年間をかけ、さらに現地調査を進める。

1万2000年で6回活動

1891年に起きた国内最大級の内陸性地震「濃尾地震」の震源地・岐阜県本巣郡根尾村門脇の根尾谷断層で通産省工業技術院地質調査所が実施していた第2次調査が4月30日に終わり、過去約1万1千年の間に、断層が6回活動していたことを確認した。この断層はこれまで、3ー4千年に1度の割合で活動したとみられてきたが、もっと短い活動間隔だった可能性が高くなった。濃尾地慶はマグニチュード(M)8の地慶だったが、地質調査所は今年3月、根尾谷断層の過去の動きが一目で分かる地層を初めて発見。4月21日からウレタン樹脂を使い、地膚表面を厚さ一2−3cm以下にはぎ取って標本にするなどして、各層の境界などを調べていた。地質調査所の栗田泰夫主任所究員よると、調査の結果、地層は10層あり、最深部は約1万2千年前の地層だった。このうち活動跡と判定できる部分は濃尾地震を含め6層とみられ、過去6千年分に限ると、3層を確認できた。これらの点から「活動は2千一3千年に1回の答では」と推測している。地質調査所は今後、収集した地質資料を分析して活動時期を絞り込む。今年秋には、この断層を村内の別の地点で調べ、活動時期特定の精度を高める。

「参考資料」 @中日新聞:平成9年3月17日 A中日新聞:平成9年5月1日


文責:事口壽男

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Revised 9 Oct. 1996