最古土偶の遺跡どうなる

三重・飯南町

日本最古とみられる縄文時代草創期前半(約1万2千年―1万1千年前)の土偶が出土した三重県飯南郡飯南町の粥(かゆ)見井尻遺跡をめぐる、同県教委と県土木部の遺跡保存についての協議が始まり、議論は白熱化の様相だ。遺跡が、県が計画する国道バイバス工事のルート上にあるためで、県教委側が遺跡部分のあるルート変更を合めた保存案を考えているのに対し、土木部側は「バイパス計画の変更は難しい」という。県が計画中の工事は、飯南町内の国道368号とl66号の重複部分と、368号をほぼ南北に結ぶ約2kmのバイパス計画で、本年度中には着工予定だ。遺跡は、バイパス起点となる重複部分から南へ数10m離れたルート上にあり、計画では遺跡部分を合めて盛り土構造で道路を造成する。

バイパスめぐり白熱必至

発掘調査が進むにつれ、土偶をはじめ、縄文草創期の住居跡が複数見つかるなど、縄文時代の成り立ちを解明できる遺跡であることが判明。遺跡の重要性は高まるばかりで、専門家の注目度もアップしている。関係者の話では、土偶出土の発表直後の今月初旬、県教委が県土木部に調査報告する形で、担当者レベルでの話し合いを始めた。その後、盛り土でなく、橋梁にする、ルートを一部変更する‐などの保存案が県教委側から挙がった。
県教委・文化芸術謀は「遺跡自体を埋め立てるのは、(調査成果から)だれが考えてもおかしい」とし、県土木部道路建設課は「そばに川や住宅があって、ルートや工法の変更には地形的な難しさがある。構造上の計画変更は厳しい」とする。この一方、両者とも「何か妙案を考えたい」と[析衷案]探しに知恵を絞っている状態。地元の同町では「何らかの形で遺跡を町の活性化につなげたい」という活用論が根強く、県の議論の成り行きを注意深く見守っている。

日本最古とみられる土偶

高さ6.2cm、最大幅4.2cm、厚さ2.6cm。薄い褐色で、逆三角形の体と豊満な乳房の表現に加え、全体的に丸みを帯ぴている。9月に見つかり、他に出土した土器の特徴から、東京大の大塚達郎助手(考古学)が、縄文時代草創期前半の土偶だろう、と判断。これまで最古とされてきたのは、縄文早期のもので、学界の常識を約2千年さかのぼる発見となった。

「参考資料」:中日新聞:平成8年10月28日


文責:事口壽男

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Revised 9 Oct. 1996