スエズ運河の骨格きまる

壮大古代エジプト風

日本の今後の中東貢献で最大の目玉となるスエズ運河をまたぎぐ「スエズ架橋」建設について、橋の構造の骨格カイロ関係筋から明らかになった。それによると、橋の4本の橋脚は外観をオベリスク(古代エジプトの記念碑)の形に仕上げ、橋脚の高さはカイロ郊外ギザにある世界最大のクフ王のピラミッドと同じ約140mにするなど、古代エジプト色を十分に取り入れた気宇壮大な架橋となる。 日本政府の建設、運輸省などの当局者がカイロにだびたび出張、エジプト政府の担当者と長期にわたって詳細な打ち合わせを続けながら構想を練った。完成後には、砂漠と運河をバックにした優美でざん新なデザインの中東和平のシンボルの橋が姿を見せることになる。カイロ北東部とシナイ半島を結ぶこの橋は、片側2車線の対面通行で、スエズ運河の水面から橋げたまでの高さは70mと、この部分の高さでは世界一。総延長は約4キロで、形は横浜ベイブリッジと同じ「斜張橋」を採用、橋脚から扇状にケーブルを何本も張り、橋げたを支える構造となる。総工費は日本が約6割を負担、残りはエジプトが支出し、工事開始は1,2年後とされる。橋の名前は未定だが「和平橋」にしたいとのエジプト側の強い声があるようだ。エジプトのムバラク大統領は昨年3月の訪日の際、アフリカとアジアの両大陸をつなぐ平和の橋建設として官民の協力を強く求め、同年9月、当時の村山富市首相の中東歴訪後から双方の協議が本格化した。しかし、工事入札の問題もあって、数100億とされる総工費も含め橋の骨格はこれまで公表されていなかった。 12日からカイロで開かれるアジア・北アフリカ経済サミツトで、日本側から概要が明らかにされる可能性もある。

スエズ運河
アジア、アフリカ両大陸の境界にあるスエズ地峡を貫く運河。フランス人のレセップスが1859年に着工し10年後の69ねん、総延長162.5kmの運河が開通した。その後の追加工事部分を含めると総延長は188.5km。エジプトが1956年運河の国有化を宣言したのに対し、イスラエルと英、仏両軍が軍事介入し、スエズ動乱(第2次中東戦争)が発生。67年の第3次中東戦争でエジプトがシナイ半島を失ったため、同運河は閉鎖された。エジプトは80年末までに拡幅・増築工事を実施。運河の地下にはトンネルがあり、両岸を結んでいる。

参考文献:中日新聞 平成8年11月2日


文責:事口壽男

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Revised 9 Oct. 1996